維新は立憲を叩き続けるか手をつなぐかの選択を迫られた

今年の参院選では第1党の立憲が議席を減らし、第2党の維新が議席を伸ばした。前回と違い、参院選で立憲の求心力が高まったわけではない。

しかし、以前に書いた記事(「比例票では野党第1党となったが…維新が『政権交代の選択肢』として浮上しきれない根本原因」、8月2日公開)でも指摘したように、維新も比例で議席を伸ばしたとはいえ、選挙区では地盤の大阪以外でほとんど伸びず、野党第1党の最低条件と言える「全国政党化」の足がかりをつかめなかった。最近はメディアの「維新上げ」機運もしぼみがちだ。

維新は立憲から「野党の中核」の立ち位置を奪うことに失敗した。少なくとも次の衆院選までの間に、維新が主導権を握って野党の中核となる構図を作るのは難しい。

こういう状況の中で、維新は次の衆院選に臨むことになる。必然的に「野党として立憲とも組んで自民党に対峙たいじする」か「与党の補完勢力とみられても立憲を叩き、野党第1党の座を奪うことを目指す」か、どちらかの路線を選ばなければならない。

維新が野党第1党を目指すなら、これまでのように立憲を叩き、違いを強調するのがベストな方法だ。実際、筆者も臨時国会が開会してしばらくは、こうした路線を取るのだろうと思っていた。

支持率を落とす自民へすり寄る意味が薄まった

だが、それを許さなかったのが、岸田政権の「崩壊過程」とも言える現在の状況である。この状況で立憲との差別化を図り、自民党にすり寄ったところで、維新にとってメリットは多くない。

そもそも、自民党内で維新と近いとされた安倍晋三元首相はすでにこの世になく、菅義偉前首相も政権の中枢にはいない。維新の中に、泥舟のような岸田政権と運命を共にするより、鼻をつまんで一時的にでも立憲と組んでおく方が得策、という考えが生まれたとしても不思議はない。

握手をしながら、後ろに回したもう一方の手では、ウソをついているというジェスチャー
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