共闘が選挙協力に発展する可能性はほぼない

松井氏の言葉を待つまでもなく、今回の「共闘」が選挙協力に発展する可能性はおそらくほとんどない。両党ともそんなことを考えてはいないだろう。

維新は3年前の国民民主党とは状況が違う。もともと旧民主党という一つの政党から誕生し、基本的な政策が近い国民民主党と異なり、維新は新自由主義的側面を強く持ち「自己責任社会」を志向する。「支え合いの社会」をうたうリベラル系の立憲とは、目指す社会像が真逆と言っていい。

そんな両党の選挙協力など、両党の所属議員もそれぞれの支持者も、誰も望まない。むしろ支持が離れる可能性が高い。実現の可能性どころか、実現に向けた動きさえ起きないのではないか。

もし何かあるとすれば、それは個々の議員の政党間移動だろう。これだけ基本理念や政策が異なる政党なのだから、現実には簡単にそんな事例が発生するとも思わないが、何が起きるか分からないのが選挙前の政界の常である。求心力を持つ政党に、所属議員が引き寄せられる可能性はないとは言えない。

そして、よほど大きなスキャンダルでも生じない限り、構図的に優位にあるのは立憲の方なのだ。

両党の「共闘」で国民民主はどう動くか

維新のことばかり書いてきたが、筆者がそれ以上に関心を持っているのは、国民民主党の動向だ。

現在の国民民主党は、玉木雄一郎代表をはじめ、2020年の立憲民主党との合流新党が結党した時に、それを拒んで党に残った議員たちで構成される。立憲にはある種の近親憎悪的な感情があるのか、その後は何かにつけ、特に玉木氏の立憲への「逆張り」的言動が目につく。行き着いた先が、今年の通常国会での政府の2022年度予算案への賛成、そして岸田内閣不信任決議案への反対という、与党と見まがうばかりの行動だ。

新聞の見出しには「衆院選」の文字
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです

昨年の衆院選で敗れ、有権者から「野党として臥薪嘗胆せよ」という審判を受けた国民民主党が、選挙が終わった途端に民意を無視して「与党化」していく光景は、見るに堪えないものだった。しかし、今回の立憲と維新の「共闘」は、こうした国民民主党の動向にも影響が及ぶ可能性もある。