人生の転機となった母の逮捕
そして中学3年生のときに母親は2回逮捕され、実刑判決を受ける。
【Aさん】今の現状に戻るきっかけになった出来事としては、普通にママが〔2回目に〕捕まったっていうことなんですけど、中3になった、ほんまに4月ぐらい。4月ぐらいに、始業式の日、家庭訪問の日やって、家庭訪問の週やったんですよ。なんで、早帰りで、帰ろうとしたときに先生から、「今ママから電話来て、家の鍵をママが持って来てしまって家入られへんから、直接、里おって」って言われたんですよ。『なんかおかしいな』と思って、里、行かずに、そのまま家帰ったんですよ、『なんかおかしい』と思ったから。案の定、家の前に警察立ってて。「ここの家なんですけど」っつったら、警察が電話してやりとりし始めて、「入っていい」っていう許可が下りて私に伝えてきたんですけど、「家んなか、入っても大丈夫やねんけど、なかの物とかは一切触らんといて」って言われたんです。
『これは終わったな』と思って「分かりました」って言って。「この後、どっか行きますか」って言われたら、もうすぐ里、行かないとあかんから「こどもの里に行きます」って言って、そしたら「分かりました」って言われて、家入って。
その注射器とか粉とかストローとかそういうのを全部集めて。家宅捜索される前やったから全部置きっぱなしやったんです。全部集めて。そのまま。
【村上】Aさんが集めたの?
【Aさん】はい、私が全部集めて。粉とかストローとかも全部切って、トイレに流したんですよ。
【村上】Aさんが流した。
【Aさん】注射針とかは切れなかったから持って。それ以外のものは全部やったけど、でも『やっぱあっちはプロやし無理やな』とか思いながらも、もう全力めっちゃ尽くしましたね、そのとき。
そのまま里、行って。里の人はもう話知ってたんかな。中学校の先生も多分、その時点で知ってて、その日の夜に学校の先生とか来てくれて、状況みんな把握したって感じで。
恐れていた「母の逮捕」は安心の種でもあった
「今の現状に戻るきっかけになった出来事」というように、母親の逮捕がAさんの人生の転機となる。「戻るきっかけ」というように逮捕は悪化というよりも回復へのきっかけだが、それは表面的には薬物をやめることができたからだ。「普通にママが捕まった」ことは、それまでもっとも恐れており、不安の種だったことであり、だからこそ「なんかおかしいな」と予感が働いたのだろうが、逮捕のあとには安心の種にもなる(「その後ママが捕まってからはやっぱりママがずっと隔離されてるから、何も安心してたんですよ、めっちゃ。」)。