「新型インフルエンザ」は家畜の豚から広がった

さて、新型コロナウイルスの災禍を経た社会では、畜産業への「逆風」が勢いを増している。

というのも「集約型の工場的畜産こそ、感染症の温床だ」という見方がされているからだ。

狭いスペースで大量の家畜を飼育するためには、抗生物質を飼料などから投与することが慣行として定着している。が、これによって薬剤耐性を持つ菌やウイルスの誕生が引き起こされ、人への感染リスクも懸念されているのだ。

事実、米国のマウント・サイナイ医科大学の研究では、2009年に世界的に大流行した新型インフルエンザは、メキシコで飼育されていた家畜の豚の間で流行していたウイルスが原因であったことが判明している。

新型コロナ禍によってこうしたことがシビアに議論されるようになったが、じつは2000年代初頭から、医学の世界では薬剤耐性菌やウイルスの恐怖が囁かれていた。

2017年にはWHOが「食用家畜における抗菌性物質の使用に関するガイドライン」を発表し、各国に畜産における抗生物質(抗菌剤)の使用量を削減することを勧告した。

ここ最近また世界の感染者数が増大している新型コロナ禍をみれば、この問題がいかに恐ろしいものかよくわかるだろう。