世界では肉食への批判が高まっている。農産物流通コンサルタントの山本謙治さんは「畜産業は環境への負荷が高く、温暖化や食料危機を悪化させるとの批判が高まっている。海外では代替肉などの取り組みが進んでおり、日本も対応を迫られている」という――。
※本稿は、山本謙治『エシカルフード』(角川新書)の一部を再編集したものです。
小泉進次郎氏の「失言」
2019年9月、小泉進次郎環境大臣(当時)は訪問先の米国・ニューヨークで「訪米中、ステーキはいつ食べるのか?」と記者から質問を受けてこう答えた。
「毎日でも食べたいね」
わたしたちの記憶にも新しいこの発言だが、食のエシカルの観点から、また一国の環境省のトップの発言としてはまずいものだった。
というのも近年、世界的には家畜の肉を食べること、それを拡大生産していくことに対する目が厳しくなってきているからだ。
その大きな理由が環境への悪影響である。
つまり、環境大臣という立場(当時)の小泉氏が、「ステーキを毎日でも食べたい」と発言したのは、かなり恥ずかしい態度だったといえる。
世界で進む食のエシカルの文脈を、日本はあまり真剣に考えていないんだということを露呈させてしまった出来事といってよいだろう。
欧米のエシカル意識の高い層からすれば「日本はちょっと、おかしいんじゃないの?」と言われても仕方がない。幸いなことに、現地メディアはこの発言を大きく報じてはいない。それはそもそもこの分野で日本へ期待する欧米人がおらず、注目も集まっていないということなのかもしれない。
はっきりしているのは、わたしたちがこのまま無自覚に際限なく肉を食べるべきではない、ということだ。
少なくとも世界で家畜の肉、ひいてはたまごや乳といった動物性タンパク質をどのように摂るべきかということを、世界の状況を見ながら考えるべきである。