※本稿は、光澤裕顕『仕事がつらいときに読む仏教の言葉』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
現役の僧侶でも上司への不満はある
お坊さんが上司を語る——「お坊さん」の上司ってピンときませんよね。そこは「師匠じゃないのか」と。確かに仏門の中においては、師弟関係が一般的でしょう。しかし、現代のお坊さんは仏門の中だけで生活しているわけではありません。特に日本のお坊さんは「出家」したといっても、社会との関わりを保ちつつ活動しているのです。
私自身、現役の僧侶ではありますが、今は自分がお預かりしているお寺に住んでおりません。この本を執筆している今日現在、妻子と京都で暮らし、本山に勤めております。宗派によって形態はさまざまですが、私の場合は「本山」といっても、修行をしているのではなく、事務員として働いているのです。参拝される方々の応対はもちろん、経理の仕事や境内の建物の修繕、講演会の準備など、一般的な会社組織とあまり変わりません。
当然、師匠ではなく仕事上の「上司」がおりますし、いろいろとお小言もいただきます。正直、不満が全くないわけではありません。
仲の良い職場の同僚と席を囲むとき、必ず盛り上がる話題が「上司への不満」です。これはどの業界も共通です。耳をすませると、ほら
「○○部長はさ、本当に現場のこと見えてないよね」
今夜も繁華街のあちこちで上司への不満を肴に盛り上がっています。
しかし、結局悪口なんて言う方も言われる方も良いことはありません。上司への不満はただ愚痴をこぼす以外解消する方法はないのでしょうか。
ブッダは理想の上司なのか
組織やグループで働く以上、上司は必ず必要となります。ですから不満のない、理想の上司はみんなの願いなのでしょう。「上司にしたい有名人」や「上司にしたいキャラクター」が毎年のごとくランキングされています。ざっと高評価の理由を見てみると
•親しみやすい
•優しい
•知的で頼りになる
•話をしっかりと聞いてくれる
といったイメージが挙げられていました。
そう考えますと、もしブッダが上司だったら「理想の上司」になるのでしょうか。優れた指導者であったことに疑いはありませんが、果たして……。