日本で20年以上暮らすニュージーランド人大学講師のルイーズ・ジョージ・キタカ氏は、アジア・メディアセンターに日本への旅行の現状について寄稿した。それによると、添乗員付きツアーの料金は現在、パンデミック前の通常の旅行費用と比較して「3倍から4倍」に跳ね上がっているという。慎重にコロナ対策を実施する日本は旅行先として安心できるが、コスト面で手が届かない存在になっているわけだ。

旅行客を宿に招き入れる女性
写真=iStock.com/JohnnyGreig
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「歴史的な円安」という集客の好機を逃している

国境閉鎖レベルの厳格な水際対策は、コロナの感染事例が海外を中心に発生していたパンデミックの初期には有効であった。その後も、変異株の病原性が高いとされた時分には、強力な株の入境を防ぐという意味で一定の効果があったといえるだろう。

しかし現在では、オミクロン株の亜種であるBA.5が主流となり、感染力の高さが指摘される一方で弱毒化が進んでいるとされる。欧米を中心に多くの国が経済の正常化へ舵を切っており、ニュージーランドは8月1日から国境を完全に開放した。入国者は引き続きワクチン接種の要件を満たしている必要があるが、隔離は必要ない。

アメリカも6月から入国時の陰性証明を不要とし、イギリスは3月から入国後検査を廃止するなど規制緩和の動きが進んでいる。

一方の日本では、6月からツアー客のみの受け入れという独自の基準が設けられた。結果として、歴史的な円安という集客の好機を逃している。

また、現在では新規感染者数が世界1位となっており、この状況で海外からの流入を主な感染源と考えることには無理がある。

ジョンズ・ホプキンズ大学が発表する28日間移動合計(8月30日時点)で、日本の感染者数は約582万人となり、2位韓国の320万人、3位アメリカの283万人を大きく引き離している。世界の一部の国では全数把握を廃止しているため、完全に対等な比較とはならないものの、日本が世界的にみて高い水準にあることは明らかだ。

この状況で国内旅行を制限せず、海外からの流入を絞ることに意味はあるのだろうか。

岸田首相は24日の会見で、日本人を含むすべての入国者に求めている陰性証明書の提出について、3回目のワクチン接種を条件に免除する方針を示した。さらに外国人観光客の入国をツアー客に限定するという制限を緩和し、9月からは個人旅行も認める方針と読売新聞やNHKで報じられている。

「日本に行きたい」という外国人観光客のニーズは、これまでになく高まっている。年末年始の旅行に間に合わせるには、このタイミングがギリギリだろう。日本経済の再生のためにも、より迅速な対応が望まれる。

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