利害が一致した。思惑が合致した――。東京工業大と東京医科歯科大が、統合へ向けた協議を始めることがわかった。なぜ、2校が統合するのか。キーワードとなるのは、「大学ファンド」「国際卓越研究大学」である。

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写真=iStock.com/gnagel
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政府は大学の国際競争力をつけるため、10兆円規模の大学ファンド(基金)を創設し、その運用益をもとに数大学に年数百億円ずつ配る(2024年度からの予定)。その対象となる「国際卓越研究大学」を公募する。

東京工業大、東京医科歯科大が統合すれば、研究力が強化され、「大学ファンド」による資金獲得が得られやすい。2大学の統合協議は、資金獲得という利害、思惑がピタリと合ったから、と見ていい。

一橋、東京外大、東京芸大を加えた「5大学連合」構想

ところで、東京工業大、東京医科歯科大の統合話は、今回が初めてではない。

2000年代前半、行政改革が進むなか、中央省庁の統合再編が行われた。文部省と科学技術庁が統合して文部科学省が誕生したのも、このときだ。そして、行政改革の流れは国立大学にも及び、大学の統合話が持ち上がってくる。

その最たる動きが、前述の東京工業大、東京医科歯科大に一橋大、東京外国語大、東京芸術大を加えた「5大学連合」構想だった。人文社会、自然科学がほぼそろっており、東京大に匹敵する規模となる。

2000年、こんな記事が出ている。とても興味深いので長くなるが引用する。

<一橋大の石弘光学長、東京外国語大の中嶋嶺雄学長、東京工業大の内藤喜之学長の三人は昨年四月、ドイツへ一緒に出張した。本場のビールを飲み、すっかり意気投合した。帰国後、再会して、「われわれは一緒がいいですね」と胸の内を確かめ合った>(「AERA」2000年3月6日号)

このときの「一緒」案は、単位互換などの教育連携の域を超えた「統合」を意識したようにも思える。3大学が「一緒」を求めたのは、これまで東京大、京都大など旧制の帝国大学を起源とする大学に、煮え湯を飲まされた思いを抱いていたからだ。予算規模で東京外国語大は東京大の30分の1程度、東京工業大全体は東京大工学部の半分、といわれていたからだ。