「鬼に金棒だ」「艶が出ていいですね」

そんな状況を打開すべく、「一緒」話はさらに盛り上がっていく。記事の引用を続けよう。

<六月、ビールを酌み交わしながら、内藤氏が切り出した。
「もう一、二校、増やしませんか」
異論はない。早速、別の二人の学長に声をかけた。
一人は東京医科歯科大の鈴木章夫学長だ。石氏も、
「医学の知識をもって弁護士になるなら、鬼に金棒だ」
と歓迎する。鈴木氏も喜ぶ。
「これからの大病院、大学病院の院長に経営の知識は欠かせない」
もう一人、東京芸術大の澄川喜一学長を迎え入れた。
「文化の香りがします」
「艶が出ていいですね」
と学長たちは、はしゃいだ」>(「AERA」2000年3月6日号)

このころ、メディアで5大学連合=第二東大の誕生か、と報じられている。東京大にはない芸術学部という「艶」があり、第二東大は本家の東京大をしのぐのでは、と5大学関係者のあいだでは期待する向きもあった。

しかし、この構想は頓挫してしまう。「艶」の東京芸術大が「オンリーワンになる学生をつくる」という理由で、5大学連合から抜けてしまう。その後、4大学連合構想は、「一緒」=統合という形では着地できなかった。学内で支持を得られない、新しい学長に「一緒」案が引き継がれなかった、という背景があったとされる。

なお、4大学連合構想に入らなかった、お茶の水女子大、東京農工大、電気通信大、東京学芸大の都内国立大学関係者は異口同音に、「取り残された感じで、心中穏やかではなかった」と振り返っている。

4大学連合は統合に至らなかったが、このうち東京医科歯科大、東京工業大、一橋大、東京外国語大の4大学で教育連携が行われるようになった。総合生命科学、海外協力、生活空間研究などのコースが設置され、4大学のどの学生も他の3大学の授業を受け単位を取得できる。それは、今日まで続いている。

それゆえ、今回の東京医科歯科大、東京工業大の統合協議について、一橋大のある教員は落胆していた。