平日や冬季の稼働率が低く人件費が高い割に生産性低い

一方、茨城県の老舗キャンプ場を経営するB氏が「儲かっています!」と豪語していたのも思い出した。B氏はキャンプ場の仕事が好きで好きでたまらないというオタク気質の持ち主で、1日のほとんどの時間をキャンプ場の管理に費やしている。

ビジネスには“数字=ソロバン”も“情熱=ロマン”も両方大事。どちらもバランスよく保ちたいと願う橋村氏は、自社の資金力だけでは投資が続かないと判断。他企業とコラボレーションをすることにした。

コロナ禍で赤字になるも、大手企業4社より第三者割当による増資を受けるヴィレッジインクは2018年から2019年にかけて創業以来最高益を上げたが、2020年、2021年は連続して赤字に。コロナ禍での利用客の減少、新規拠点への投資がまだ回収できていないなどの理由による。

しかし、この年に同社は大手企業4社より第三者割当増資を受け、新株を発行した。JR東日本スタートアップ、西日本新聞社、不動産ポータルサイトの運営を行うLIFULL、地方ゼネコンの加和太建設だ。

ヴィレッジインク一社だけでは新規拠点の投資が続けられないという判断があったためだが、4社とは「地方活性化に寄与する自社のミッション」で合意し、赤字でも事業の将来性を見込まれたゆえの結果だ。

今夏から運営するようになった、南伊豆の海の家「双葉食堂」。
写真提供=本人
今夏から運営するようになった、南伊豆の海の家「双葉食堂」。

「ゲームアプリを世に出そうと思えば、いきなり100万ダウンロード達成のような“跳ね方”が可能です。ですが、キャンプ業界は天候やコロナなどに左右される、平日や冬季の稼働率が低い、人件費が高い割に生産性が低いなど、“跳ねる要素”がほとんどありません。だからすぐにEXITを狙うベンチャーキャピタルや銀行からの投融資は望めないので、同じ想いを持つ企業とタッグを組んだほうがいいと考えました」

ベンチャーの創業者はEXITしないと大金を手に入れにくいが、現段階の橋村氏には、選択肢の一つでしかなさそうだ。

JR東日本スタートアップとはDOAI VILLAGE、西日本新聞社とは福岡県糸島にある「唐泊VILLAGE」、LIFULLとは同社が開発したインスタントハウスでのグランピング事業やワーケーション施設等で連携している。企業ではないが、前述の福岡県うきは市のビジネスモデルのような地方行政と組んだローカルエリアプロデュースもスタートしたばかり。企画力と運営力があるベンチャーと、資本・熱い想い・リソースがある企業や行政とは相性がいい。

「西伊豆の直営キャンプ場はそのままですが、これからは『民×民』『官×民』のコラボ一辺倒で狙っていきます」と橋村氏の鼻息は荒い。