“金太郎飴”のグランピング場では、リピート率は低い
全国グランピング協会によると、2022年中に開業を予定しているグランピング施設は全国で200前後に及ぶという。
この、昨今のグランピング場飽和状態にも、橋村氏は苦言を呈する。
「最近は半透明のドームを使っているところが多くて、まるで金太郎飴状態。手ぶら宿泊OKとか、お風呂とトイレの水回りが完備とか、どこもスペックが似たり寄ったりです。それはそれでいいけれど、高級ホテルと違いが感じられません。ユーザー側からは『一体どこに行ったのか、後になると記憶が曖昧』『料金が高いから1回行けばもう十分』という感想を聞きます。
つまり、最初は物珍しさで行くけれど、リピートしようと思う人が少ない。しかも、ホテルほどではないにせよ、初期投資や人件費にコストがかかり、投資を回収するまでに相応な時間がかかります。利益だけをねらっているのであれば、やはり参入はしないほうが賢明かもしれませんね。儲け主義だけで参入したキャンプ場やグラピング場は、そのうち淘汰されるでしょう。でも、アウトドアサービスが大好きで、ローカルでイノベーションを起こそうと思う熱い想い、他とは違う特別感を創造できる事業者にとっては、そのうち市場がブルーオーシャンになるかもしれません」
キャンプ場でクスリを売っているという噂が立つも……
順調に舵取りしているように見えるヴィレッジインクだが、もちろん山あり谷あり。経営が破綻寸前までになったこともあり、とある地域では、住民から猛烈な抵抗に遭いキャンプ場の進出を諦めたこともある。
また、本社がある下田市では「西伊豆のキャンプ場で違法なクスリを売っているらしい」との噂を立てられ、実際に酒場で吹聴している人を筆者は見た。
橋村氏はもともとよそ者であり、それなのに地元業者が獲得できない南伊豆の海の家の運営の案件を任されるなど、保守的な土地にあってはやっかみの存在なのだろう。
しかし、橋村氏は全く意に介さない。
「“出る杭”は打たれますが、“出すぎた杭”なら打たれません。出すぎた杭になれるように展開していくだけです」
冒頭に書いたとおり、地方にはクセが強めの奇人・変人がゴロゴロいる。橋村氏もその一人だが、彼がコラボする相手もまたしかりで、橋村氏は彼らを「変態」と呼ぶ。橋村氏が定義する変態とは、人がやりたがらないことを喜んでやるが、仁義や信頼を大事にする人々のこと。
ビジネスは“何を誰とするか”が重要であり、橋村氏は今後も愛すべき変態たちとの邂逅、そしてコラボを望んでいる。