故郷に錦…佐賀県の行政から指定管理事業者に選ばれる
「最初に出会った頃、橋村はキャンプ場の普通の管理人でした」と語るのは、ヴィレッジインクの古参社員。“普通の管理人”の会社は順調に成長し、各地にキャンプ場やグランピング場をつくっていく。
同社のモットーは「何もないけど何でもある」。前述のAQUA VILLAGEのような辺境地や過疎地、耕作放棄地、廃校、無人駅などを利活用して命を吹き込み、非日常感を演出。これならば初期投資が比較的少なくて済み、なおかつ「廃れていくローカルの活性化に結果的に寄与できます」と橋村氏は意義を感じている。
例えば……。
橋村氏の故郷、佐賀県唐津市にある波戸岬キャンプ場は、過疎化で廃れる一方だった県営波戸岬海浜公園の中にある。佐賀県からのオファーでアドバイザーに就任し、県営公園のリブランディングを計画した後、指定管理者として選定されてキャンプ場運営に乗り出した。
西伊豆に比べるとごく一般的なリーズナブルさが売りのキャンプ場だが、雄大な玄界灘がすぐ目の前。2022年5月には、コロナ禍の中で、九州初のキャンプフェスの開催にこぎつけ、奥田民生、氣志團、トータス松本、PUFFYといった著名アーティストを迎えて大盛況のうちに終了。まさに故郷に錦を飾った。
人が捨てたものに価値を見いだし、ビジネスのタネに
現在ヴィレッジインクが運営するキャンプ場やグランピング場は、全国5箇所で展開されている。
群馬県みなかみ町のJR土合駅は、下りホームがトンネルの中、上りホームが地上という独自の構造で、地下要塞のような「日本一のモグラ駅」として知られる。そこは無人駅であり、駅構内も利用した「DOAI VILLAGE」というグランピング場をスタート。“鉄オタ”をはじめ、ファミリー、カップル、女子会など、さまざまな層に人気を博している。
このDOAI VILLAGEは「無人駅&辺境グランピング」というコンテンツで「日経トレンディ2021」ヒット予測ランキング1位になった。
2022年春からは、福岡県うきは市で、使用しなくなった老舗酒蔵の母屋をリノベーションして酒宿経営にも乗り出す。さらには、うきは市内の廃校を利用したオートキャンプ場運営、無人駅の運営の業務委託などをも順次予定している。
繰り返しになるが、無人駅、過疎地、廃校など、人が捨てたものは橋村氏にとっては“宝の山”である。そこに価値を見いだし、ビジネスのタネとしているのだ。