開業2年目で通期黒字、初期投資は5年以内に回収

ここでヴィレッジインクが運営している代表的な2つのビジネスモデルの事業収支の一部(2021年版)を紹介したい。

●西伊豆・秘境プライベートグランピング型
年間売上 数千万円
初期投資 4500万円
稼働率 40%
客単価 2万円前後
投資回収 4年

●九州・一般キャンプ場型
年間売上 数千万円
初期投資 2800万円
稼働率 45%
客単価 2000円前後

客単価が2万円の価格が高いモデルは西伊豆のプライベートグランピング型。天候に左右されがちで厳寒期(12月中旬から2月)は休業するにもかかわらず、健闘している。一方、稼働率が45%となっているのは九州の一般型で、低価格ゆえ誰でも利用できるカジュアルさと、アウトドアブームによりビギナー層の取り込みで裾野が広がったのが奏功した。しかもヴィレッジインクは指定管理者ゆえに設備投資は自治体、管理と運営はヴィレッジインクという、官民でリスクを分散する事業モデルなのでバランスがよいと言える。

ちなみに、日本オートキャンプ協会発行の「オートキャンプ白書2022」によると、2021年の日本全体のキャンプ場の稼働率は20.4%で、ヴィレッジインクの2つのビジネスモデルは軽くその2倍以上だ。それでも飲食業や旅館業など他のサービス業に比べて低いことを、橋村氏は課題としている。

福岡県うきは市の酒宿。人間を酒米に見立て、酒造体験ができるというコンセプトが面白い。
写真提供=本人
福岡県うきは市の酒宿。人間を酒米に見立て、酒造体験ができるというコンセプトが面白い。

筆者は以前、千葉県のキャンプ場経営に今年新規参入したA氏を取材したことがある。そこはキャンプとグランピングのハイブリッドスタイルで、キャンブ用具会社からテントとその周辺のギアを借り、ショールームのようにしてユーザーに使ってもらう取り組みが新しい。

A氏は以前会計事務所に勤務していたので、数字の見方、経費削減や利益率を上げる戦略には自信があり、アウトドア好きが高じてキャンプ場経営をスタートした。

しかし「自然相手のビジネスは予想ができないことが多くて本当に難しい。台風や大雨は、ハイシーズンであろうとお構いなしにやってくるので」と彼は嘆いていた。