日テレ局員最大のアイデンティティー

ではライバル局は「24時間テレビ」の放送をどう見ているのか。放送内容については、ネット上と同じような否定的なスタンスの人が多く、「ウチではやれないし、やらない」という声をよく聞く。

また、“超長時間特番”の難しさを挙げる声も多い。かつて夏の超長時間特番と言えば、日本テレビの「24時間テレビ」とフジテレビの「FNS27時間テレビ」が双璧だったが、「FNS27時間テレビ」は2016年で夏の生放送をやめて、秋の収録放送に変更。2017年からの3年間は9月か11月に放送していたが、コロナ禍に突入した2020年はついに放送休止し、その決断はおおむね支持を集めた。

さらに翌2021年、フジテレビは放送時間を3分の1の約9時間に縮小した「FNSラフ&ミュージック~歌と笑いの祭典~」を生放送。同番組は今年も9月10日・11日に9時間生放送されるだけに、フジテレビは夏の“超長時間特番”をあきらめたのかもしれない。

これは「FNS27時間テレビ」がたびたび放送意義を問われていたことに加えて、コロナ禍の国民感情に合わせて番組を縮小させたということだろう。この点は日本テレビの「24時間テレビ」とは対照的であり、フジテレビをたたえる声も目立つ。

しかし、「FNS27時間テレビ」のようなバラエティーは世相や国民感情を踏まえる必要性がある一方、日本テレビの「24時間テレビ」は真逆。チャリティー番組である以上、「難しいことがあったときでも続ける」ことが自然な選択肢となり得る。「困っている人が多いのなら、それを助けようとするのが『24時間テレビ』だ」という思考回路なのではないか。

この3年間、長年番組に関わってきた上層部や管理職ほどそんな思いが強いことは、関係者たちから何度か聞いていた。実際に「ありがとう」という感謝の声をもらえることや、社内外とのやり取りが活性化することなども含め、関係者たちにとって「24時間テレビ」は「箱根駅伝」をしのぐ最大のアイデンティティーであり、やめることは考えづらいのだろう。

唯一、称賛を集めた2020年の「募金ラン」

最後にもうひとつ挙げておきたいのは、メイン企画のチャリティーマラソンについて。長年、「なぜ走るのか意味不明」「真夏のマラソンは非常識」などと批判の標的となっていたが、2020年の「募金ラン」だけは好評だった。

ジョギングする女性の後ろ姿
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その理由は高橋尚子率いる「チームQ」が本当のチャリティーマラソンを行ったから。高橋はスタート前から「お金をいただく気持ちはないです」と断言し、逆に「1周5kmごとに自ら10万円募金する」という姿勢を明かしていた。けっきょく高橋、土屋太鳳、吉田沙保里、陣内貴美子、松本薫、野口みずきの6人は、放送終了ギリギリまで計236kmを走り、470万円を募金して感動を誘ったことは記憶に新しい。

しかし、昨年はこの募金システムを採用せず通常版に戻し、しかも10km×10組という断トツの過去最小距離で実施。しかもリレーの第1走とアンカーをジャニーズタレントに走らせる構成で「接待」などと厳しい声にさらされてしまった。今年はEXIT・兼近大樹が4年ぶりの単独ランに挑むことが発表されているが、批判され続けた過去の形に戻ろうとしているようにしか見えない。

チャリティーマラソンに限らず「チームQ」のような「報酬をもらわず募金する」という出演者が増えれば、「24時間テレビ」の放送意義を問う声は減るのではないか。当時、番組内で「“ランナーが走った分だけ募金する”という形は海外では一般的」と連呼していたが、そもそも視聴者の中には「ランナーに限らずチャリティー番組の出演者は無報酬で出演するのが海外では一般的」という見方をしている人が少なくない。