「おしゃれな家」とそうでない家の違いとは
なぜこんなお話をするかというと、こうしたお宅は1軒や2軒ではなかったからです。ぼくの感覚では、1000軒のうち、少なくとも900軒はそうした「垢抜けない家」でした。なぜそうなってしまうのか。
ぼくがたどり着いた答えは、「調和」です。人でたとえると、こういうことです。服が一流の高級ブランドでも、サイズが合っていなかったり、髪の毛がぼさぼさだったり、持ってるカバンや履いている靴が服とちぐはぐだと、台無しですよね。反対に、低価格なブランドでも、合わせるアクセサリーや、着こなしによってはすてきに見えます。服それ自体以上に、コーディネートがおしゃれを決めるポイントなのです。
部屋も同じです。ぼくが見てきた「おしゃれな家」に住むお客様に共通していたことがあります。それは家を「飾る」感覚がある、ということです。たとえば、一面真っ白の壁ではなく、一部に柄や色が入った壁紙を使う、絵画や花、オブジェを飾るといった具合です。自分たちが住む環境を、より居心地よく、気持ちが高鳴る空間にするために、モノを買い足していく。寒くないけれど、おしゃれのためにスカーフを巻く、そんな感覚かもしれません。着こなしならぬ「住みこなし」力、そんなものを感じました。
「新築が一番いい」垢抜けない根本的な理由
そんなのセンスじゃないかというご指摘が飛んできそうですが、ぼくが感じたのは、文化的背景の違いです。どういうことかというと、実は、「おしゃれな家」に住んでいる大半が海外から来られたお客様だったのです。
ここには1つ、大きな考え方の違いがあると思っています。
みなさんは、新しい家と、古い家、どちらに魅力を感じるでしょうか。
今でこそ、中古のリノベーション物件だったり、ファッションでも古着を「中古」ではなく「ヴィンテージ」と呼んだり、新しくないものに価値を感じる人が増えてきました。
とはいえ、やはり「新しいものがいい」という感覚が、日本人の中では根強いと感じます。この感覚は、部屋や家具に対しても同じです。新築時の真っ白の壁を保つために、持ち家にもかかわらず、絵を飾るのに穴をあけることすら抵抗を感じる。せっかく買ったソファだけど、汚したくないからカバーをかける……。手を入れたり、使い込んだりすることを、「汚れる」というようにマイナスにとらえる人が多いのではないでしょうか。