アマゾンのレビューと購買パターンの関係性
話を聞いているうちに、彼の本業は何なのだろうか、という疑問がわいてきた。
「ボクですか。大学を卒業してから、ネットで物品販売をやりたいと思っていろいろやっていたんですけれど、今は資金が底をついて、先輩のところに身を寄せているんです」
卒業した大学名を尋ねれば、東京六大学の1つであった。それなら、まともな就職先もあったのではないか、とも思ったが、それは彼が選んだ生き方であり、私が口を挟む必要はない。
多くのアマゾンの利用者は、アマゾンで購入するときレビューを参照するが、果たして、そのレビューと購買パターンには、どのような関係があるのか。アメリカでは、アマゾンのレビューと購買パターンに関する大学の研究結果がある。
スタンフォード大学のデレック・パウエル教授らが17年、《心理学的科学誌》に発表した研究によると、アマゾンの利用者は、より多くのレビューがついている商品を購入する傾向がある、と指摘されている。同じような携帯電話でも、5つ星のレビューで、2.9のレビューが25件ついているより、同じ2.9のレビューが150件ついている方を選ぶ、というのだ。
5つ星のレビューにおける中央値は3だ。2.9のレビューとは平均以下となる。平均以下のレビューの件数が多いということは、利用者の商品に対する評価が低いことを意味する。しかし、アマゾンの利用者は、悪いレビューが多くついた携帯電話を買う傾向が強いのだという。パウエル教授は「大衆に追随する心理が働いているのだろう」と分析する。
口コミ情報を信用する消費者は5割以上
さらに、アメリカの調査機関のアンケート調査によれば、ネットショッピングの際、91%の消費者がレビューを読み、84%がレビューを自分の友人からの推薦と同じように信用している、と答えている。加えて、日本のネット調査会社マイボイスコムが17年に行ったネット上の口コミ情報に関する調査によると、ネット上の口コミ情報を「かなり信用する」と「まあ信用する」を合わせると55%を超えており、口コミ情報を参考にするサイトとして、1位の《価格・ドット・コム》の次に、アマゾンのカスタマーレビューが2位となっている。
ならば、アマゾンで5つ星のレビューがたくさんついた商品の売れ行きがよくなるのは、当然であろう。出品者がフェイクレビューを金銭で買い取れば、その分、費用と手間が発生するが、後で売上げが上がり元が取れると踏んでのことなのだ。
私も取材先を探すために、フェイスブックの4つのグループに入った。《アマゾンジャパンレビュー募集中》や《JPアマゾンレビューアー募集》などのグループだ。私のフェイスブックには、私がジャーナリストである旨や、私のこれまで書いた記事などがタイムライン上に上がっているので、断られるのを覚悟で申請したが、申請したすべてのグループに難なく入ることができた。
参加申込者については、何の審査もしてないのだろう。グループのメンバーの数は、1万人から2万人。フェイスブックで検索すると、簡単に見つけることができる。私は、そこから参加者にランダムに取材のお願いを送って取材先を探した。