今回の「避難民の波」だけでなく、これまで数々の戦争がヨーロッパに大量の難民をもたらしてきた。例えば1980年代のイラン・イラク戦争では、両国から無数の若者がヨーロッパに逃れた。
アメリカも無関係ではない。これまでアメリカが戦った数々の戦争から、大量の避難民が生まれた。昨年EUに難民申請を行った人々の出身国トップ3は、シリア、アフガニスタン、イラクだった。
いずれにせよEUは、ロシアが引き起こした避難民の波を食い止めなければならない。まず取り組むべきは、多くの避難民を出しているエジプトからバングラデシュに至る各国が、ウクライナ以外の供給元から小麦を調達するのを手助けすることだ。ジョー・バイデン米大統領は既に、中東と北アフリカに10億ドルの食料支援を行うと表明している。
さらに長期的には、各国が認識を新たにすることも必要だ。グローバル化された現代の世界では、失うものがほとんどない国が、安上がりでリスクを伴わない混乱を引き起こし、恩恵を被ることができる。そして、他の国々がその動きに報復することは、ほぼ不可能なのだ……と。
当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら