日本の「痛税感」はスウェーデンよりも強い
ではきちんと税金を集めて、とくに「新しい生活困難層」に届くような給付をおこなえば、分断は解消に向かうのではないか。日本の税負担率は先進国(OECD諸国)のなかでも下から5番目と低いのだから、税金をしっかり集めていく余地は大きいのではないか。
ところがそれが困難なのです。日本はこれまで、税をしっかり集めて還元することをしてこなかったがゆえに、税金はとられるだけだという「痛税感」が強いのです(注)。中間層の痛税感は、スウェーデンより強いという調査結果もあります。
注:佐藤滋・古市将人『租税抵抗の財政学 信頼と合意に基づく社会へ』岩波書店
日本政府の債務残高は先進国で最大ですので、税金は集めたそばから借金返済に充てられてしまい、直接に生活を支える使い方がされません。2019年10月から社会保障に使うという約束で消費税が10%になりました。消費税が5%であった時と比べて、2021年度の増収分は14.3兆円でした。でもそのうち5.8兆円が借金返済に、3.5兆円が基礎年金の財源となり、本来の趣旨で社会保障の機能強化に使われたとされるのは約4兆円に留まります。
しかも、前述のとおり社会保険財源に税が補填される関係で、これまた先進国1位の高齢化率に引っ張られて社会保障の税支出は自動的に増大するのですが、このような税の使われ方は還元感が得にくく、そもそも社会保険に加入できないことなどからその恩恵に与れない人が多いのです。
このような事情から、税への信頼は低下するばかりです。ゆえに増税は、消費税であろうと所得税であろうときわめて難しくなります。
このように社会の分断からくる「ヨコの不信」と、政治や行政そして税に対する「タテの不信」が、いわば相乗的に強まって、結局は自助しかないと誰もが考えることになってしまうのが、現在の日本なのです。