大量の情報が氾濫するインフォデミック
三つ目は、インターネット上に大量の情報が氾濫した状態「インフォデミック」が起こるためです。特に「危険だ」という情報は、見聞きした人が善意や義務感に後押しされるため、根拠があやふやだったり誤解だったりしても広まりやすいのが特徴です。そうなると正確な情報にたどり着くのが困難になり、手間や時間などのコストがかかってしまいます。
新型コロナワクチンに関しても、このインフォデミックが起こったのは記憶に新しいところです。新しいものへの不安から「子供には新型コロナワクチンの効果はないし、むしろ危険だから打たないほうがいい」というデマがSNSで広まりました。新型コロナワクチンは、子供が接種した場合も感染予防効果と重症化予防効果がありますし、危険性は否定されています(※4)。ただ、もともと子供は重症化することが少ないため、リスクとベネフィットを考えて受けましょう、ということです。
四つめに、デマをビジネスにつなげている人、ビジネスのためにデマを広めている人が存在するためです。「医療に頼らず病気を治せる」という触れ込みで、自分の商品やサービスを売る人がたくさんいます。2015年には自称祈禱師の男性が1型糖尿病の子供の母親に「インスリンは毒」「従わなければ助からない」などと言ってインスリンを投与させずに死亡させ、最高裁判所が殺人と認定しました(※5)。そのように「ステロイド、ビタミンK2、薬全般、ワクチン、母子手帳などはよくない。あなたたちは騙されている。代わりにこの商品(サービス)を買いなさい」と勧めるビジネスは多数あります。今はSNSでコミュニティーをつくり、イベントやセミナーを開催して集客し、物を売ったり民間資格を取らせたりしてマネタイズしていることもあるので注意が必要です。
※4 厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A 小児接種(5〜11歳)」
※5 朝日新聞デジタル「糖尿病男児にインスリン投与させず 最高裁が殺人と認定」(2020年8月25日)