そもそも酒は「百薬の長」ではない

昔から「酒は百薬の長」という言葉があるように、適量のお酒ならかえって体によいという説もあります。実際、過去の報告では、まったくお酒を飲まない人と比べて、少量のお酒を飲んでいる人のほうが死亡率が低いという研究もありました。しかしながら解釈には注意が必要で、低い死亡率の原因が適量飲酒とは限りません。たとえば、病気がちなために禁酒している人が研究対象に含まれると、見かけ上、非飲酒群の死亡率が上がり、適量飲酒が健康によいかのような誤った結果が出ます。

健康上の理由で禁酒している人をあらかじめ解析から取り除くなど、バイアスを減らすことで結果は変わります。最近、適量飲酒でも健康にプラスの効果は観察できないという大規模な研究が報告されました(※4)。専門家の間では議論があるところで、適量飲酒の効果は確実とは言えません。一方で適量を過ぎると体に悪いことは確実です。現在、飲酒していない人が、健康効果を期待してわざわざ少量の飲酒を始めるべきではありません。健康のことだけを考えると、お酒は飲まないほうが望ましいのです。

少量飲酒であってもリスクがあるかもしれないことを承知したうえで、私はお酒を飲んでいます。適量飲酒は体によいなんてことがなくても、私にとってはリスクに見合うだけのおいしさ、楽しさがお酒にはあります。お酒をできるだけ長く楽しむためにも、適量にとどめ、体重管理や運動などの他の健康習慣でカバーしようと思っています。

※4 Alcohol use and burden for 195 countries and territories, 1990-2016: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2016

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