飲酒の楽しみvs痛風のリスク

ただし、適量のアルコールなら絶対に安全というわけではありません。適量であっても尿酸値が上がったり、痛風発作が起こったりすることもあるでしょう。高尿酸血症のことだけを考えると、アルコールは飲まないほうが無難です。私は、新型コロナの流行で飲食店がお酒を提供できない時期に、プリン体やアルコールを含まないノンアルコールビールを試したのですが、これもなかなかおいしいものです。企業努力によっていろいろと選択肢が増えるのはありがたいことです。ノンアルコール飲料に切り替えたほうが安心だろうとは思います。

でも、人生の目的は痛風にならないことだけではありません。飲酒の楽しみと痛風のリスクを天秤にかけ、飲酒の楽しみを取ってもいいでしょう。それは個人の選択です。正直に言いますと、私自身も週に2回の休肝日は設けているものの、飲酒量はときどき適量を超えることもあります。ただ、こういった価値観は、私が無症候性高尿酸血症にとどまっているから言っていられることかもしれず、もしも将来的に痛風発作を経験すれば、飲酒をしないほうがいいと考え方を変えるかもしれません。痛風発作の痛みは激しく、「風が吹いても痛い」のが「痛風」の由来だと言われているぐらいだからです。

グラスに注がれた複数種のおいしそうなクラフトビール
写真=iStock.com/Ridofranz
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「赤ワインは体にいい」説の真相

他にもお酒に関しては諸説があります。一時期「赤ワインは体によい」という説がはやりました。「フレンチパラドクス」といって、フランス人は動物性脂肪をたくさん摂取するわりに心血管系疾患が少ないという現象が知られています。そのためフランス人が多く消費する赤ワインに豊富に含まれるポリフェノールなどの抗酸化物質が心血管疾患に予防的に働くのではないか、という仮説が提唱されました。

まだ明確な結論は出ていませんが、少なくとも赤ワインをたくさん飲めば心血管疾患になりにくいという単純な話ではないのは確かです。適量の赤ワインを消費している人に心血管疾患が少ないという観察研究はあるものの、赤ワインが病気を予防しているとは限りません。たとえば、赤ワインを好む人に野菜や果物をよく食べる傾向があれば、赤ワインそのものに健康へのプラス効果がなくても、赤ワインを飲んでいる人に病気が少ないように見えます。観察研究には一定のバイアスが入るのは避けられません。

一方、薬の臨床試験のように、赤ワインを飲む群と飲まない対照群をランダムに分け、心血管疾患の発生率に差があるかどうかを調べることができれば、赤ワインの心血管系疾患への予防効果を検証できます。