ヨコオさんはゲームが持っているメディア上の特性を考え抜いたそうです。

ゲームはプレイするたびにエンディングを自在に変えられます。この特性を利用して、1回目は主人公の目線でプレイしてもらい、2回目は倒された敵の目線でプレイしてもらう。そうすると同じ物語を両面から体験できるので、アニメや映画、小説にはできない、ゲームだけの面白さが提供できるはずだ。

富野監督は大きく頷き、ヨコオ流の創作術をメモ。アニメーションのフィールドにも活かせる大きなヒントを得たようでした。

一方ヨコオさんは「創作の秘密」をカメラが回る場で語ったことについて、「これまで言語化してこなかったことを話せたのは僕にとっても大きな収穫でした」と前向きに受け止めてくれました。ヨコオさんもこのアウトプットをとっかかりに、より面白い作品作りに取り組まれるはずです。

「富野監督はいまだに自分の正解を探している」

「富野監督は成功者には珍しいタイプですね」

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対談を終えたヨコオさんが小声で感想を伝えてくれました。私がもう少し詳しくお願いするとこのように話してくれました。

「富野監督の年代で高い成果を出した人は、揺るがない信念をもって断定的なことを口にするタイプが多いと感じています。『これが正解だ!』という態度で常に上から発言したり。でも富野監督は違う。時には『あの時、こうすればよかった』『どうすればもっと良い作品が作れるんだろう』と弱音を吐いたり、ゆらゆらと揺れ動いています。富野監督は成功者には珍しいタイプですね。いまだに自分の正解を探している」

いつまでもゆらゆらと揺らいでいるとは、変化する余地が垣間見えるということでもあるでしょう。「自分の行動が、リーダーを動かすかもしれない」その予感が、富野監督の現場には満ちているのです。

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