選挙で投票しないと罰金を科される国もある

結局は、民主主義は上から押し付けられてもダメなのです。一人ひとりが「本当に民主主義が大事なのだ」と理解して、はじめて民主化が成功するのでしょう。民主主義を実現するには、まずは選挙に行くことが大事です。何とか行かせようと、投票所へ行くことを有権者に義務付け、行かないと罰金を科す国があります。義務投票制を採用しているのは、オーストラリアやブラジルなどです。

ブラジルは非常に投票率が高いのです。ところが、ブラジルへ取材に行って「選挙で誰に投票したのですか?」と聞くと、かなりの人が覚えていませんでした。

つまり罰則をつくると仕方がないから行くだけで、何も考えないで投票する人が多い。単に投票率を上げればいいというものでもないのです。

日本の場合は18歳になると選挙管理委員会から投票所入場券が送られてきます。当たり前のことのようですが、アメリカは違います。アメリカの場合は、有権者登録をしなければ選挙に行って投票できません。

自ら積極的に政治に関わろうという人によって成り立つという考え方、これが大事です。義務化することによって投票率を上げても何の意味もない。むしろ積極的に参加しようというかたちにする、上から与えられるのではなく、自ら勝ち取ろうとする、それが民主主義なのだと思います。

星条旗と1票を投じる人の手元
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中国には中国式の民主主義がある?

2021年3月18日からアメリカと中国の外交トップ会談が開かれました。その場で両国は互いに相手を厳しく批判しました。その際、中国から「中国には中国式の民主主義がある」との言葉が飛び出しました。中国の民主主義とは、何でしょうか。アメリカのそれとどう違うのでしょうか。

もう少し具体的に説明しますと、会談でアメリカのブリンケン国務長官(外相)は、中国で問題になっている新疆ウイグル自治区でのウイグル人の迫害、香港の民主化運動の弾圧、台湾周辺の軍事行動などについて批判しました。

これに対して、中国共産党中央政治局委員の楊潔篪ようけつちは「中国には中国式の民主主義がある」と反論したわけです。

ここで大事なのは、中国側が中国共産党の政治局委員だったことです。もちろん、中国にも政府の外相はいます。にもかかわらず楊潔篪が出てきたのです。これは、共産党の政治局委員のほうが、外相よりもはるかに強い立場にあることを表しています。中国では、共産党があらゆることを決めています。これを前提に考えるとわかりやすくなります。