子供に「普通」を求めるから行き詰まる
C君のグループホーム滞在期間には、恐らく100万円を超える国と自治体の補助があったと推測される。
それを私的な問題の解決に公費を使うとは何事だと思う向きもあるかもしれないが、親の死後も彼の引きこもり暮らしが続いていれば、やがて生活保護の対象となる可能性も十分ありうる。また、引きこもりや暴力をこじらせ入院となれば、1日あたりの公費負担は数十万にのぼる。引きこもりは家族の問題であると同時に社会的な問題でもあるのだ。
内閣府が15歳~34歳を対象に行った調査によれば、現在「普段は家にいるが、近所のコンビニなどには出かける」「自室からは出るが、家からは出ない」「自室からほとんど出ない」に該当した者(「狭義の引きこもり」)が23.6万人、「普段は家にいるが、自分の趣味に関する用事の時だけ外出する」(「準引きこもり」)が46.0万人、「狭義の引きこもり」と「準引きこもり」を合わせた広義の引きこもりは69.6万人と推計されている(40歳から64歳までの引きこもりも60万人以上)。
これは、社会に適応しにくい子供が支援のないままに学校や世の中に出て、結局、あちらにぶつかり、こちらにぶつかり、つまずいた結果とも言える。中軽度の発達障害の子供ならば、学校で上手くいかない思いを抱いたまま社会に出て、社会に出ればその思いがさらに増幅し、社会から退場していく確率が高まる。すでに「HIKIKOMORI」は国際共通語ともなっており、その数は、イタリアをはじめ欧米各国で社会問題として認識されている。
問題は、引きこもり以前に、あるいは引きこもり初期に、親が社会的支援を要請し、的確な対応をしているか、ということである。親が子供に「普通」に生きることを求めず、適切な支援組織を探し出していれば、自立へと向かう可能性が生まれる。C君の例は、妹が心ある対応をしてくれたために解決に向かったが、こうしたケースは稀であることも忘れてはいけない。