子どもを叱るときは、なにに注意するべきか。精神科医の井上智介さんは「理由を説明せず、命令口調でしかってしまうと子供を傷つけてしまう。とくに『ちゃんとしなさい』はNGワードだ」という――。

※本稿は、井上智介『子育てで毒親になりそうなときに読んで欲しい本』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。

母は居間で息子を叱る
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イヤイヤ期と反抗期がないのは危険

イヤイヤ期と反抗期、子どもの成長過程において、この2つがないのは、かなり危険です。

イヤイヤ期というのは、子どもが2、3歳のころに、あれもイヤ、これもイヤ、とダダをこねる時期。なぜイヤイヤ言うのかというと、いくらイヤイヤ言っても、親がなんとかしてくれるとわかっているからです。これは子どもの安全基地ができている証拠。

子どもがイヤイヤ言わないとしたら、イヤイヤ言うと、どこかにほうり出されるかもしれないし、ごはんを与えてもらえないかもしれない、と子どもなりに命の危機を感じているのです。

実際、0歳や1歳の段階から、親から愛情を与えられていない子は、親の顔色をうかがうのに必死で、イヤイヤという自分の欲求に蓋をしています。たまに「うちはイヤイヤ期もなくて、手がかからなくていい子だった」と喜んでいる親御さんがいますが、そういう話を聞くとドキッとします。

一方、小学校高学年から高校生までの思春期と、ほぼ同時期に起きる反抗期は、子どもが親から精神的に独り立ちするために必要な期間です。乳幼児期は心も体も親と一体化していますが、3、4歳くらいになると、だんだんと体の自由は手に入る一方、心はまだ親と一体化している状態です。

子どもからすると、親の経済力や生活力にはかなわないので、どうしても精神的な上下関係というのがあります。その状態が反抗期までつづきます。