あえて史実にないことを描いている
以上、見てきたように、北条一門や有力御家人らが集まって、会議をすることはあったが、いわゆる「鎌倉殿の13人」全員が集まって、合議したとする史料は現時点では存在しない。
よって「鎌倉殿の13人」(十三人の合議制)なるものは存在しなかったと言えよう。
では、なぜ、脚本家の三谷さんは史実にないことを描いたのだろうか。
ご存知の方も多いと思うが、三谷さんは、これまで会議を題材にした作品を手がけてきた。アメリカ映画の名作『十二人の怒れる男』(1957年)のオマージュ作品といわれる映画『12人の優しい日本人』(1991年)は、日本に陪審員制度があったらという架空の設定を基に、12人の陪審員がある殺人容疑者の判決をめぐって議論を繰り広げるコメディである。要は、会議を描いた作品。
また、織田信長死後の後継問題や領地再分配を決めた清洲会議を小説に仕立てたりされている(2012年。2013年に映画化)。これも会議の話である。
よって、会議(合議)作品は、三谷さんの得意分野。先に紹介した「僕好みの設定」という言葉には、これまで会議作品を手がけてきた三谷さんの思いが込められているように感じる。それ故に、あえて、史実にはない、「十三人の合議制」を描くことにしたのではないか。
合議制が大河ドラマのなかではどのように描かれるのか。今のところは分からないが、「鎌倉殿の13人」の面々が会議をする様子も、楽しく描いてくれると期待している。