宗教と政治のズブズブ関係が話題になるのは一瞬

安倍晋三元首相の「悲劇」を受けて、世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)と政治の関係が注目されている。

メディアでは連日のように、「安倍家3代と統一教会」「自民党と宗教との深い関係」なんてニュースが報じられ、中にはこの宗教と関係が深い自民党議員などを羅列したリストまで公開されている。

自由民主党
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評論家や著名人も黙っていない。「カルト宗教が日本を食いものにしているのを止めるべき」「今こそ自民党は旧統一協会との関係を断ち切れ」などという意見が多く聞かれる。

ただ、統一教会と政治の関係を30年近く注視してきた立場から言わせていただくと正直、この宗教団体と自民党との関係を断ち切ることはかなり難しい。ましてや、カルト扱いして日本から追い出す、なんてことは不可能だと感じる。

今は安倍元首相を失った悲しみでマスコミも威勢のいいことばかり言っている。もし熱烈な安倍氏支持者や愛国者の皆さんから「報復」のような形で、旧統一協会関連施設や、信者が襲撃されるというようなトラブルが起きれば、さらに世論もヒートアップするだろう。

ただ、それだけだ。喉元過ぎればなんとやらで、別の大事件が起きればマスコミはわっとそっちに飛びついて世間の関心も薄れていく。半年も経過すれば、多くの人は「統一教会? ああ、そんな事件あったね」なんて反応で、自民党とズブズブだなんだという話も忘れ去られていく。

旧統一教会を弾圧できない「オトナの事情」

なぜそんなことが断言できるのかというと、「30年以上前からその繰り返しだった」からである。

実ははるか昔から「自民党と統一教会」「岸信介から続く安倍家との関係」なんて話は週刊誌などでは当たり前のように扱われていた。テレビや新聞はスルーしていたが、それでも1980年代に「霊感商法」が社会問題になった時などは、連日のようにこの宗教を取り上げて大騒ぎをしており、その過程でこのテーマにも言及していた。

しかし、それで「終了」だ。何かの話が飛び出して瞬間風速的に注目を集めるが、その後に自民党が旧統一教会との関係を断ち切ります、なんて方針転換したこともないし、山上徹也容疑者のように家族が信仰にのめり込んで人生が狂う「宗教2世」へのセーフティーネットがつくられたなんてこともない。

「これまではそうだったかもしれないが、今回は元首相が殺されているのだぞ!」と怒りに震えている方も多いだろうが、だからといって政府が、そう簡単にこの宗教を弾圧できない「オトナの事情」がいくつかあるのだ。

山上容疑者が鵜呑みにしたネットの陰謀論によれば、「安倍家が裏で手を回していた」「自民党が警察やマスコミに圧力をかけていた」というストーリーがメジャーだが、そんなチープな話ではなく、実はこの宗教はもっと大きな政治力学の中で守られている。

それは「アメリカ」だ。