大規模な通信障害を起こしたのにネットでは大絶賛

災いを転じて福となす、とはまさしくこのことだろう。大規模通信障害を起こして、日本全国に混乱をもたらしたKDDIの「好感度」が爆上がりしているのだ。

理由は、高橋誠社長の謝罪会見だ。

これは通信障害発覚後、情報開示の姿勢に「顧客目線」が欠けていると、官邸や監督官庁から指摘され、慌てて催したもので、いわば完全に「後手」に回った社長会見だった。それにもかかわらず、ネットでは大絶賛されている。例えば、以下のような感じだ。

通信障害に関して説明するKDDIの高橋誠社長=2022年7月3日、東京都千代田区
写真=時事通信フォト
通信障害に関して説明するKDDIの高橋誠社長=2022年7月3日、東京都千代田区

《この社長すごい。1人で説明し、質疑応答している。日本の企業でこれだけできる社長は、どれほどいるのだろうか》

《技術者の端くれとしてKDDIの会見を見ていたが、KDDIに対する好感度がかなり上がった。幹部があらゆる質問を打ち返せているし(なにより驚いたのは社長がiOSとAndroidの仕様差分に言及した点)、慌てふためいたり助けを求めたりするシーンがまるでない》

巨大企業のトップであるにもかかわらず、社長をはじめとした幹部社員が技術を把握してスラスラと解説できるということが、技術者を中心に称賛されていて、「こんな優秀なトップが仕切っている会社ならばおかしなことをしないだろ」とKDDIのイメージまで上がっているのだ。

日本企業の謝罪会見でよく見る残念な光景

さて、こういう聞くと、「なぜ他の会社はKDDIのような会見ができないのだろうか」と首をかしげる人も多いのではないか。

これまで日本の不祥事企業の社長会見といえば、ペーパーを棒読みして、奥歯にものがつまったようなもの言いの連発で聞いている人たちをイラつかせて大炎上というのが定番となっている。また、技術的な話になると、担当幹部に丸投げしたり、こそこそと耳打ちをされたりしながら、ただたどしく回答をしているような社長もいて、「本当に現場のことわかっているのか?」という感じで、見ている人たちを不安にさせたものだ。

そういう「ダメ社長会見をする企業」とKDDIの明暗を分けた差とは何か。本当に「社長の優秀さ」が違うだろうのか。