時には外からの目で日本経済を見る
TDKがニューヨーク証券取引所に上場したときのことだ。3代目の社長に帯同し現地のオフィスへ出向くと、銀行から贈られた豪華な花が匂っていた。夜中である。人の気配を感じるほどの花だった。
「きれいな花ですねえ」
なにげなくいうと、社長は「阿呆、さっきから向こうもおまえを見てるわ。花に見られている自分って、意識したことあるか?」。
自分も見ているけれど、相手からも見られている。外からの視点で見ることを忘れるな。そういうことを教えてくれたのだと思う。
部下と向かい合うときも、取引先と交渉するときも同じである。さらにいえば、日本国内の視点だけではなく、海外の視点で見るとどうなるかを常に意識しなくてはいけない、ということでもある。
その意味で、外国語の新聞・雑誌を読む作業は、苦労はあるが実りが多いと思っている。中国問題ひとつとっても、日本の新聞と外国メディアとでは捉え方がまったく違うからだ。
私たちはつい、帰国したときに情報に遅れてしまうのではないかと不安になり、海外へ出たときも日本の新聞を手にしてしまう。だが、時には外からの目で世界や日本経済を見ることも必要なのだ。