原因は子供時代、充分に浴びなかった“紫外線”にあった
現在、世界的に目の近視化が強まって、強度近視の方が増えています。
この原因の多くが、子ども時代に太陽光を十分に浴びないからだろうと推測されています。子ども時代に太陽光を浴びる機会が少ないと、目の硬さに貢献する膠原線維が細いままなのです。
ですから、子どもの将来の強度近視化を防ぎたいならば、小さい頃から太陽の下で十分に遊ばせたり、屋外のスポーツに参加させることなどが重要です。太陽光に含まれる紫外線や青紫の可視光線は、目の中の膠原線維を太くして、互いにくっつけ、眼球が硬くなる引き金になります。
さらに、20歳を過ぎても眼球が伸びて強度近視化するのは、目の膠原線維の強度が弱くて柔らかい一方、眼圧は相対的に高いために、柔らかい眼球が眼圧により伸びていって、近視化が進むのです。
ですから、強度近視の方は、繰り返しになりますが、自然の太陽光での紫外線を浴びることと、早期から緑内障用の点眼治療をして、眼圧を下げることが大切です。
強度近視は緑内障につながると述べました。軽い段階で緑内障を診断できれば、緑内障治療薬で眼圧を下げて、眼軸が伸びる強度近視への変化も予防できます。この意味でも、緑内障の早期発見、早期治療は、じつに重要なことなのです。
「最初にすべきは白内障手術」なのはなぜなのか
さて、近視の反対の遠視眼では、眼軸が短くなっています。このために水晶体が虹彩を押し上げて、目の水の流れる隅角を狭くします(図表4)。
このように狭隅角を招く遠視眼では、夜間などは、瞳孔が暗さで拡大することで、虹彩が周辺に寄り、隅角がより狭くなります。すると、ますます目の中の水の流れが悪くなります。
水の流れの抵抗が高くなると、線維柱帯を通ってシュレム管、さらに静脈へと至る水の流れが阻害され、眼圧が高くなります(図表5)。この高眼圧によって緑内障も起こしやすいのです。
他方で、遠視眼の狭隅角は、水晶体、特に白内障が原因となることが多くあります。このため、遠視眼での緑内障は、多くが白内障手術により解消されます。
じつは、「緑内障治療において、まずは最初にすべきは白内障手術である」という宣言が、国際眼科学会で何年も前にされました。遠視眼での緑内障は典型的な例ですが、白内障が緑内障の原因の多くにもなりかねないのです。