日本語でも女性には共鳴音、男性には阻害音が多い

さて、日本人の名前の音象徴的分析は当時ほとんどされていなかったこともあり、私なりにケーラーの結果を膨らませてみたいと思っていた。まずは、第1話にも登場した、明治安田生命がデータとして公開している日本人の人気の名前の分析からだ。

結果、女性名に含まれる子音のうち67%が共鳴音で、逆に男性名に含まれる子音は64%が阻害音だった。この結果は、先に述べた、英語話者を対象に行われた魅力度研究の結果とも一致する。日本語でも、女性には共鳴音が、男性には阻害音が似合う傾向にあるらしい。

メイドカフェでは仮説が通じない謎

そんな研究をしているときに、偶然にもメイド喫茶に出会ってしまったわけだ。メイドさんには「メロ」だの「ユララ」だの、珍しい名前がたくさんあった。分析しなければ失礼にあたる。ちょうど私のお気に入りである「あっとほぉ~むカフェ」では、すべてのメイドの名前をウェブ上で公開していた。よし、分析だ。

研究当初、私はこう思っていた。「メイドさんは女性らしさを押し出している。だから、メイド名に含まれる共鳴音率は普通の女性名よりもっと高いだろう。メロちゃん、ユララちゃんは良い例だ」。そこで、当時在籍していた133名の名前をすべて分析してみた。

しかし蓋を開けてみると、残念。メイド名の共鳴音率は58%で、一般女性名の共鳴音率67%よりも低かった。仕方がない、これでメイド喫茶にさらに通いつめる大義名分ができたというものだ。私の仮説がなぜ間違っていたのか検証せねばならない。

秋葉原のメイドカフェのチラシ配り
写真=iStock.com/Goddard_Photography
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