公正証書遺言を作成するための怒涛の書類作成
ここからは時間との勝負だった。飛行機で最寄りの空港に着くとレンタカーを借り、すぐに実家へ。そして義母を乗せて向かったのは市役所。今後の手続きのため、義母と叔父関連の書類を大量に発行してもらった。
司法書士との打ち合わせは、事前の綿密なやり取りが功を奏し、あっさり終わった。最終的に成年後見人になってもらえるかどうかは家庭裁判所の判断になるが、問題はなさそうだった。なお成年後見人になってもらった場合の司法書士への報酬は、叔父の財産の中から家庭裁判所が決め、叔父の財産から支払われる。
続いて訪れたのは公証役場。まずは書類を提出し、翌日、叔父の入所する施設に出向いて公正証書遺言を作成することを確認した。また、気になっていた叔父自筆の遺言書を見てもらうと、やはり法的効力はないとのことだった。公正証書遺言の内容については、叔父と事前に話し、自筆文書を基に進める方針を確認した。
なお、公正証書遺言は原本、正本、謄本が各1部あり、原本は公証役場で保管。正本と謄本は遺言者が保管するのが一般的だが、自筆遺言書の内容と同じになるようなら、義母が保管することを公証人は提案した。こうして手続きは着々と進んでいった。
公正証書遺言には「全財産を義母に」との文字が
翌日は診断書作成のための受診日。車いす生活になっている叔父のため、地元の介護タクシーで精神科のある病院への付き添い。医師は施設からの意見書を基に、いくつかの質問を繰り返していく。
結果、成年後見制度の利用が可能となり、診断書は後ほど司法書士に届けた。
病院から戻ると、今度は公正証書遺言の作成だ。施設に公証人がやって来ると、叔父と証人らはひとつの部屋に入り1時間ほど話を重ねた。後日、義母に正本を確認してもらうと、最初に見つけた自筆文書の通り、「全財産を義母に」となっていた。
実質2日でこれらの作業を終えた筆者は、残りの空き時間を使い、事前に取り寄せておいた近隣9カ所の特別養護老人ホームの資料と申込書を精査。今後の義母や義父のためにも、時間の許す限り各施設を回り、担当者と会い、叔父と義母、自分の関係を説明しながら、申込書を東京から送付することを伝えた。
手間はかかるが、実際に担当者と会っておけば、その後の話も通じやすいとの判断からだった。