2022年はBEVの本格的な普及年になった
トヨタ「bZ4X」とSUBARU「ソルテラ」、アウディ「RS e-tron GT」、BMW「iX xDrive50」、フィアット「500e OPEN/チンクエチェントイー オープン」、日産「アリアB6」、ヒョンデ「IONIQ 5/アイオニック5 Lounge AWD」。アウディ「RS e-tron GT」を除けば、すべて2022年に日本で販売を開始したBEVだ。
これに加えて、三菱ふそうの小型トラック「eCanter」の改良版、そして各社が実証実験を行っている「電動キックスケーター/キックボード」にも公道で試乗した。これらはいずれもBEV(電気自動車)だ。
テスラ「モデルS」にも久しぶりに乗った。また、5月に販売開始となった日産「サクラ」はテストコースで試乗を済ませつつ、兄弟車である三菱「ekクロス EV」は7月早々に公道で試乗する。
昨今の電気自動車は、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、さらには燃料電池車(FCEV)とのわかりやすい区別を目的に、BEV(バッテリー式EV)と表すことが多い。
そのBEV。2022年は本格的な普及年になったわけだが、じつはコロナ禍により部品の供給、とりわけ電動車では高性能で高価な半導体が数多く使われることから販売開始が大幅に遅れた。
加えてBEVは中国市場へと積極的に導入される傾向があることから、冒頭紹介した各車はいずれも当初の計画から少なくとも半年以上、後ろ倒しになって日本での販売を開始している。
「背中を蹴飛ばされたように加速」したiXとRS e-tron GT
そうしたなか試乗した率直な結論を最初に述べると、各社の各車とも走行性能に関して不足や不満を感じることが本当に少なかった。乗り物としての完成度はじつに高かったからだ。
アクセルペダルを踏み込めば電力消費が多くなる当たり前の事実から、筆者の場合、BEVの試乗は丁寧な運転操作になる傾向があるが、むしろ微速での加減速や定速走行など、一般的な乗り方での評価軸に徹することができることから収穫は大きい。
iXとRS e-tron GTでは、もって生まれた欧州ブランドの上質さと、強烈な加速力という極端な二面性を体感した。
高速道路のETCゲートを20km/hで通過し、周囲の安全を確認してからアクセルペダルを深く踏み込むと、それこそ背中を蹴飛ばされたように2300~2500kg台の車体が飛び出していく。
BEVの駆動力は電動モーターが生み出す。電動モーターの強みのひとつは、通電直後から力強い回転力を生み出せることで、このメリットは広く知れ渡ってきた。ただ、素のままの電動モーター性能では力が強すぎる。
そこで各社では磁束密度の高い磁石を用いた電動モーターに加えて、DC/AC変換を行うインバーターの制御技術を高めて、アクセルペダル操作に対しドライバーが意図した通りの加速力を生み出す。
BEVではこの制御技術を応用して、車載のスイッチ操作で加速力を変化させる「ドライブモード」なるものが一般的に搭載される。先に「背中を蹴飛ばされたように加速」と評したiXやRS e-tron GTは、もっとも加速力が強くなる、いわゆる「スポーツモード」での体感だ。
ガソリンやディーゼルなど内燃機関モデルでもこうしたモード変更機構はあるが、電動モーターは人の瞬きの1000倍以上の速さで駆動トルク制御が行えるため、BEVではよりきめ細やかなモード変更が行える。