英『ローリング・ストーン』誌はこのほか、北欧神ソーがもつとされるハンマー、生命の木として知られるユグドラシル、ルーン文字のアルジズ(ᛉ)など、北欧神話に関連した図案が「白人至上主義者たちのあいだで人気がある公認のヘイトシンボルとなっている」と述べている。

18はヒトラー、13と52は…数字に込められた暗喩

団体はヨーロッパのナショナリスト組織を名乗り、オンラインサイトなどを通じてナチス関連グッズの販売を手がけている。あからさまに過激思想を象徴するグッズが販売されていれば買い手としても警戒心が湧くが、実際には白人至上主義思想に通じるメッセージが暗号のように密かに仄めかされている。

Tシャツにはまた座標の印字が確認できるが、これはドイツ・ビューレンに位置するヴェヴェルスブルク城を指し示している。この城はネオナチのあいだで神聖視されている特別な城だ。ネオナチのシンボルとして、12個のカギ十字を組み合わせた「黒い太陽」が知られている。これは、ヴェヴェルスブルク城の北塔、ナチス親衛隊幹部の部屋に描かれた床の紋様に由来するものだ。

黒い太陽やカギ十字など比較的よく知られたシンボルであれば、政治的主張が込められてることに気づくことも容易だ。しかし、ときには単なる数字が思想を象徴することもある。米ユダヤ系NGOの「名誉毀損きそん防止同盟」が、代表的なヘイトシンボルの検索サイトを公開している。目を通しておくと、あらぬ誤解を避けるのに役立ちそうだ。

写真=「名誉毀損防止同盟」オフィシャルページより
写真=「名誉毀損防止同盟」オフィシャルページより

例として、「18」の数字がヒトラー支持を意味することがある。アルファベット順の1番目と8番目がそれぞれ「A」「H」であり、ヒトラーのイニシャルに通じるためだ。ほか、13と52の組み合わせは、アフリカ系アメリカ人へのヘイトを暗に意味することがある。白人至上主義者らは、米人口の13%を占めるにすぎないアフリカ系の人々が、全米で発生している殺人事件の犯人の52%を占めると主張している。

当然、これらは悪意ない場面では単なる数字にすぎないため、過度に避ける必要はない。しかし、意味ありげな紋様とともに描かれた商品があれば、何か特別な思想が込められていないか確認しても損はないだろう。

「白人は勝つべくして生まれた」と主張するTシャツ

問題のTシャツに話を戻すと、「BORN TO WIN/WHITE RACE」とも刻まれている。サイドカー付きバイクのイラストが添えられていることからバイクレースとも勘違いしそうなところだが、ここでの「RACE」は人種の意味だ。白人は勝つべくして生まれた、との主張となる。