世界各国の保健当局がコロナ政策に活用
実際、多くの米政府機関も追跡サイトが提供するデータを有効活用している。CDCは今後のウイルス感染についての予測モデルを作成するための基礎資料として追跡サイトのデータを利用している。米政権の新型コロナに関するタスクフォースや連邦緊急事態管理庁(FEMA)は、全米で感染が拡大しつつあった当初、感染被害の深刻度に合わせて全米各州や主要都市にどれだけの医療物資や機器、医師などの人員を送り込むかという対処計画を策定するために使用していた。
また、世界各国の保健当局の多くが外国からの入国規制を実施するにあたり、追跡サイトの数字を元に諸外国の大まかな感染状況を把握し、規制実施の是非をめぐる判断材料として利用していると指摘される。
こうしたデータは元来、感染症の専門家が将来の疫病の発生を予測し、新たな疫病にどう対応していくか対策を練り、政府や自治体の疫病対策に反映させていくのに使われる。
「疫病の実態をリアルタイムで知りたい」
ガードナー氏によると、追跡サイトは元々、感染症対策などに携わる自身の研究仲間の間だけで使うことを想定していたというが、ウイルス危機の拡大で全世界の人々がロックダウン(都市封鎖)などの行動規制を強いられて自宅にこもり、インターネットを通じてウイルス関連の情報収集を図ろうとしたことも、追跡サイトの需要が高まった要因の一つとみられている。
ガードナー氏は言う。「今回のように疫病が世界規模に広がったことにより、一般の人々も自身の問題として疫病の実態に関する情報をリアルタイムで知りたいと思うようになった。人々が簡単にウイルス情報にアクセスできるようなプラットフォームを作ったこと、それをタイムリーに提供できたから、追跡サイトの需要がこれほど拡大したのだと思います」
同氏はその上でこう付け加えた。
「新型コロナのダッシュボードのプロジェクトを立ち上げてから約1年半の間に学んだ最大の教訓は、『情報の価値』がいかに大きなものであるかということです。一般の人々は、事実を聞かされることを切望していました。情報にアクセスして特定の物事や事象に対する理解を深めるという行為が、この地球上に住む一人一人の生死を左右することになったからです」
ダッシュボードを公開して以降、米国や世界の大学や医療機関、政府当局からガードナー氏の元には問い合わせが殺到した。ガードナー氏はオンラインの講演やセミナーなどを通じてダッシュボードの「成功の秘密」について出し惜しみすることなく説明している。