感染症の「警戒警報」を示す真紅のドット

見かねた大学側は、サイトのアップデートと維持を支援するボランティアを編成し、董氏をバックアップした。以前に董氏がインターンをしていたGISソフトの開発・販売会社「Esri」(本社・カリフォルニア州)も、各種のウェブサイト上に存在するデータを抽出する「データスクレイピング」や、収集したデータを自動的に追跡サイトに取り込む「オートメイティング」の専門家チームを派遣して董氏を支えた。

集めたデータをどのようなデザインで見せるかについても董氏は頭を絞った。その結果、追跡サイトが感染症の「警戒警報」であるとの性格を強調するため、感染地域を黒地に真紅のドット(光点)で表すことにした。ドットが大きいほど感染者数が多いというわけだ。

ドットの大きさを具体的にどれほどのサイズにするかも思案のしどころだった。

追跡サイトの狙いは、ウイルス危機について人々に可能な限り正確な全体像を提供し、対策をとるうえで役に立つことだ。そのためには警告の意味を込め、それぞれのドットは人々の注意を引くような大きさであった方がいい。

しかし、個々のドットが大き過ぎれば追跡サイトの地図は全面真っ赤になり、それを見た人々を「私たちが危機を脱することは到底できない」と絶望に追いやってしまうかもしれない。

董氏のチームは、適切なドットの表示を追い求めて、常に調整を続けているという。

サイト開設からすぐにアクセスが殺到

サイトは立ち上げから数日間で、1日当たりのアクセス数が2億回を突破した。

世界各地で新型コロナ危機が深刻化するにつれ、追跡サイトを訪れる人の数も一気に増えていった。そのせいでサイトが急激に高まる負荷に耐えられなくなり、何度かクラッシュ(作動停止)した。

サイトの閲覧数が急上昇してクラッシュにつながったのは、決まって特定の地域で新たな感染が一気に拡大したときだ。2020年2月には、イタリアを中心とする欧州諸国で感染者数が増加し、なにが起きているのか知ろうとした多数のイタリア人がサイトに殺到したため、対応しきれなくなったという。