データの出所はWHO、CDC、地元メディア…

そこで大学は、追跡サイトを全面支援する態勢を作り上げた。学内の別部門である応用物理学部の実験室を開放し、同学部が所管する大学の大規模コンピューター設備を活用できるようにした。というのも、追跡サイトが扱うデータの量は拡大の一途をたどり、ガードナー氏がそれまで使っていたシステムでは対応できなくなっていったからだ。それらの膨大なデータを全て保管し、希望者がいつでも必要な情報にアクセスできるようにしておくには、大学の基幹システムを使うことが必要になったのだ。

サイトを運営するのは、サイトの立ち上げと同時に設立された、大学のコロナウイルス・リソース・センター(CRC)だ。日々の管理作業は、ガードナー氏が共同所長を務めるシステム科学工学センターとジョンズ・ホプキンス応用物理学研究所、Esriの社員ら25人ほどのスタッフが行っている。

サイトを支えるデータの出所は多種多様だ。代表的なところでは、世界保健機関(WHO)、米疾病予防管理センター(CDC)、欧州疾病対策センター、各国政府の保健衛生担当官庁、州や省などの政府や地方自治体などの当局の統計、地元メディアの報道などだ。米国とカナダ、オーストラリアといった国は都市別のデータも提供している。

WHOよりも迅速に感染状況を収集・発信している

感染が広がる中でサイトの自動化が進み、精度も高まっていった。WHOが新型コロナを「パンデミック」であると公式に認定した2020年3月頃には、少なくとも米国に関してはデータ収集とサイトへの入力の完全自動化を果たした。

ガードナー氏によれば、世界各地のデータ収集ポイントは2021年夏の時点で1万カ所を優に超えた。このうち約3500カ所からは、1時間おきに最新のデータが上がってくる。

グローバルコミュニケーション
写真=iStock.com/imaginima
※写真はイメージです

追跡サイトは、新型コロナの症例が確認された場所と症例数、死者数と回復した人の数を国・地域ごとに表示する。地図は終日、半自動的に更新され、感染者や死者などの数もほぼリアルタイムで更新されるようになっているという。加えて、世界各地でどのような種類のワクチンを何人が何回接種しているかもデータとして日々蓄積され、数字がリアルタイムで公開されている。

こうした複合的なデータ集積と公表のシステムにより、追跡サイトはWHOを含む世界の主要な保健機関よりも迅速に感染状況を報告できている。

サイトに掲載されている全てのデータは公開されており、誰でも入手可能だ。世界の保健当局や研究者らが新型コロナ対策などの研究でデータを自由に使うことができるようになっているのだ。