女性登用を躊躇する「まだ育っていない」のウソ

政府の「30%目標」は結局、頓挫した。そして「30年代には指導的地位にある人々の性別に偏りがない社会を目指す」としたうえで、「20年代の可能な限り早期に指導的地位の女性の割合を30%程度」と、目標を先送りした。だが、現状を考えると先行きは楽観できない。

もちろん問題発言を、すべて記事にしてそのまま伝えればいいわけではない。発言の真偽確認や、人を傷つけたり、差別的だったりするかなどの判断が必要だ。しかし、女性に関することになると、判断に自信が持てないためか、無視、マイルド化、紋切表現に逃げ込んでしまいがちだと感じる。

男性社会の決まり文句のひとつに、女性登用を躊躇する理由として「まだ育っていない」がある。だが、男女年代を問わず多様な価値観や受け止め方、考え方があることを想像したり受け入れたりするところまで、おじさんたちは「まだ育っていない」ように見える。

女性に関する問題発言だけではない。今や情報はSNSですぐに拡散し、動画で確認することもできる。その中にはデマや捏造ねつぞう、誤解に基づくもの、情報の質よりも短期的な刺激を求めるものなどもあるだろう。

“報道のズレ”もあらわにされる時代

しかし、首相などさまざまな人の記者会見、国会の議論、政府審議会などいろいろなものがネット配信される。マイクに向かって発信する言葉だけでなく、表情やしぐさ、会見前後の様子、審議会で他人の発言の時につまらなさそうにあくびをしている有識者なども、分かってしまう。記者の質問や会見場の様子も目撃される。かつてはベールに包まれていたものが、可視化されSNSで広がる。新聞などが伝えるものとの乖離かいりもあらわにされる。

記者会見では、ずっと下を向いて官僚の用意した紙を読み上げるばかりで、自分の言葉で国民に語ろうとしない政治家が、優れた能力を持つかのように取り上げられた記事を見ると、その判断基準を問いたくなる。報道の「根拠」を自分の視点で検討し、「裏を取る」ことも可能な時代になっている。

そんな中での懲りない昭和のおじさん的言動。このままでいいはずはない。

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