「政治家はきれいな若い女性が好き」という「定説」が流布しており、メディアの側も、それを意識しているように見える。「政治部にきれいどころを集めている」「自民党幹部担当の女性記者は美人ぞろい」などと言われている会社もある。

女性記者の側も、今後の取材活動を考えると、相手の無礼で無神経な発言にいちいち反論するわけにもいかず、そうした構造は温存される。一方、男性記者からは「政治家は女性にばかりネタを教える」などと嫉妬され、新たなセクハラや女性記者いじめなどにつながることもある。

メディアは昔も今も圧倒的男性社会

私は新聞記者の仕事を婦人部(現・生活部)からスタートした。生活関連や女性問題などを取材する部署だ。当時、先輩女性記者たちが問題視していたのは、育児疲れなどで子どもを殺したり虐待したりしてしまった母親の事件などで、母親だけを責め立てる風潮だ。子育ては、母親だけでなく、父親にも責任がある。そのことを指摘できたのは、比較的、女性の多い部署であったからではないかと思う。数は力の源でもある。

日本新聞協会の調べによると、2001年には10%余だった女性記者は、21年に24%近くにまで増えた。だが、記事が掲載されるシステムを考えると、それだけで女性の意見や見方が反映されるわけではない。記者が取材し、原稿を書き、その後、デスクが原稿に手を入れる。部長、編集局幹部などの視点も入る。

マイクを向けるインタビュアーと応える市民
写真=iStock.com/wellphoto
※写真はイメージです

日本マスコミ文化情報労組会議の、2020年3月の発表によると、19年4月現在、女性の「管理職数(デスクやキャップなど社内で指導・教育的立場にある従業員を含む)」は、8.5%と少ない。

政府が2003年に掲げた、指導的地位にある女性を「20年までに少なくとも30%程度に」する目標にはほど遠い。指導的地位の主役は圧倒的に男性。これではなかなか女性の視点や発言力を発揮できない。