最年少女性首相の誕生はフィンランド国内では驚かれなかった

サンナ・マリン首相の行動や発言に海外メディアの注目が集まる一方で、就任時、フィンランド国内の受け止め方は冷静だった。もともと彼女は党内での存在感も大きく、前首相が辞任したことで彼女が新たな首相となるのは自然の成り行きだと思われていた。

それに、34歳という年齢はフィンランドの首相でも最年少だったが、30代の首相はこれまでにもいたし、同年代の閣僚も多い。女性首相もこれで史上3人目だ。2000〜2012年には2期にわたって女性が大統領をつとめていたこともある。

国会議員の約半数は女性で、閣僚も女性の方が多い。だから国内では、首相の年齢や性別よりも、連立政権を率いる5党のリーダーたちが首相を含め、全員女性となったことの方が目をひいた。しかも5人のうち4人が30代前半だった。

フィンランドでは2000年、初の女性大統領タルヤ・ハロネンが誕生した。女性議員もますます増え、女性が党首に就く例もあったが、長い歴史を持つ大規模政党のトップに比較的若い女性が就くようになったのはこの十数年の傾向だ。

とはいえ、こうした状況に全く批判がなかったわけではない。知人の70代の男性は、周囲の男性を中心に「女の子たちにいったい何ができるんだろう」と冷ややかな目で見ている人もいると言っていたし、野党支持者の中には痛烈に批判する声もあった。

マリン政権への評価は決して性別や年齢に紐づいていない

就任後まもなく新型コロナウイルス感染症という大きな難題に見舞われたものの、他の欧州各国に比べれば感染者数が少ないこともあり、マリン政権の支持率は高く評価も高かった。ただ、政権発足から時間が経つにつれて、様々な批判の声も上がっている。だが、それらは決して性別や年齢に紐づいたものではない。おおかたの国民は、冷静に彼女の政治家としての実力を厳しく見ている。

このように若い女性が首相になったサクセスストーリーを語ると、特別な才覚を持った人の話だと思われるかもしれないが、彼女の歩みは決して珍しいものではない。