AI技術の普及は、私たちの働き方をどのように変えるのか。経営コンサルタントの神田昌典さんは「AIは人間の仕事を奪うと言われるが、そうとは限らない。むしろ、AIのデータ分析によって、自分らしく働いていれば自然に結果が出せるようになる」という――。

※本稿は、神田昌典『未来実現マーケティング』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

黒板に人物のジャンプする図で表現された右肩上がりのグラフ
写真=iStock.com/koyu
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働かなくていい現実がすぐそこまできている

私が予想する未来では、これから働かなくてもいい社会が始まる。

「そんなユートピアがくるはずがない」と、まだ想像しにくい方も多いだろうが、「働かなくてもいい社会」をつくるのが、第4次産業革命だ。

この革命に向かう過程では、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術が普及し、人間がやるよりも機械がやるほうが圧倒的に安全で信頼できるという状況が増えていく。

その結果、人間がやるべき仕事は、確実に減ってくる。だから、嫌な仕事を我慢して続けるよりも、好きな仕事をしながら気ままに暮らそうという人は、本能的に正しい判断をしていると思う。

実際、働かなくていい現実は、すぐそこだ。

タクシーの未来を見てみよう。

まず2030年には、完全に人が関与しない自動運転レベル5が実現すると予想されている。つまり、それから先は、運転手がいないロボタクシーが急速に増えていくから、運転手は働かなくてもよくなってくる。

だが、本当のインパクトは、その後だ。

人間よりも遥かに精度の高い需要予測が可能に

そのタクシー会社の本社で、来年度、発注する車両を何台にするかという事業計画をつくっているマネージャーがいたとする。今までなら、人口増減、車両数、運転手の人数などの需給を決定する要素を、優秀な人間があれこれと分析しながら判断していた。

しかしこれからは、どんなに優秀でも、人間の頭による分析だけではどうにもならない。

というのは、ライバル会社の車両数、天候や気温、車両の故障率、高齢者の増加率、イベント開催数などといった需要に直接関連する要素に加えて、一見、関係ないように見える要素――たとえば、飲食店レビューの数、特定のキーワードの検索数、ライバル会社が活用する配車システムなど、多岐にわたる膨大な情報(ビッグデータ)を分析することで、遥かに精度の高い需要予測ができるようになっているからだ。

こうした作業は、データさえあれば、もう一瞬。

魔法のランプをこするかのように、「目標数値を最大化するための、モデルを教えて」と指示すれば、AIが最適解を導く方程式(アルゴリズム)をつくってくれるようになった。マネージャーの仕事は、AIからの提案を最終確認して、発注ボタンをポチッと押すぐらいだ。