この日発表したモバイル事業の22年1~3月期決算は、1350億円の赤字。四半期としては過去最悪を記録した。これに先立つ21年12月期の通期決算は、1600億円弱の売上高に対し4200億円の巨額赤字を計上している。

自前の回線網を構築するための設備投資がかさんだからだが、もうけ抜きの「0円プラン」が足を引っ張ったことも大きい。

このまま、「0円プラン」を継続すれば、目標とする23年中の単月黒字化はおろか、赤字の垂れ流しをいつまでも続けることになりかねない。財務余力が乏しい中、もはや「顧客獲得優先の先行投資」などと悠長なことを言っていられなくなったのである。背に腹を代えられないというのは、このことだろう。

新しい料金体系は、データ通信の利用量に応じて3段階。最低料金が0〜3GBの1078円で、20GBまで2178円、無制限が3278円。したがって、0〜1GBの範囲なら無料だった「0円プラン」の利用者には値上げとなる。

利益度外視の顧客集めには無理があった

楽天モバイルが、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクに続き、自前の通信回線をもつ「第4の携帯電話会社」として本格参入したのは、2020年4月。

大手3社の寡占状態を打ち破るため、「安さ」と「わかりやすさ」を前面に打ち出し、料金設定は「データ通信無制限で月額3278円」の格安プランのみ。しかも先着300万人には1年間無料という出血大サービスを提供する、華々しいデビューだった。

そして、菅前政権の料金引き下げ要請に応じる形で、21年4月に「0円プラン」を導入。「無料」の効果はてきめんで、本格サービス開始から2年余りで580万人という契約者を確保することができた。

だが、いかんせん、利益度外視の顧客集めには無理があった。

「0円ユーザー」といえど、いったん取り込んでしまえば、電子モール「楽天市場」や「楽天トラベル」など多彩なネットサービスを展開する楽天経済圏の住人となり、非通信分野のサービスを利用することで帳尻を合わせられると見込んでいた。

しかし、「無料」ゆえに楽天モバイルを選んだ利用者たちは可処分所得に限界があり、もくろみ通りには出費してくれなかったようだ。

「官製値下げ」の限界を示す楽天モバイルの窮状

楽天モバイルは、「0円プラン」の利用者数を明らかにしていないが、契約者の3人に1人が該当者ともいわれる。

「0円プラン」廃止の発表と同時に、SNS上では「裏切りだ」「解約する」「すぐに乗り換える」と批判が殺到、「0円ユーザー」の落胆や失望があふれた。