格安プランへの乗り換えは3710万件
さらに菅前政権は21年4月、同じ電話番号のまま他社に乗り換える「番号持ち運び制度」(MNP)の手数料を原則無料化し、利用者が契約会社を乗り換えやすくする環境を整えた。
その結果、新しい格安プランへの乗り換えが一気に進んだ。
総務省が5月2日に発表したデータによると、大手3社に格安スマホ会社も含めた格安プランへの乗り換えは、3月末時点で約3710万件。携帯電話契約数の約1億4690万件の約4分の1を占めるまでになったという。
格安プランの導入から1年余りが経ったが、今なお毎月200万件前後の乗り換えがコンスタントに続いている。様子見をしていた利用者は少なくないとみられ、格安プランへの乗り換えは当分、続きそうだ。
世界主要6都市の比較でも安値に
確かに、携帯電話の料金は下がった。
4月に発表された21年度の全国消費者物価指数をみると、携帯電話の通信料金は前年度に比べ47.1%減と大幅な下落となった。生鮮食料品や光熱費、ガソリンや宿泊費などが軒並み上昇している中、携帯電話はとりわけ目を引く。
また、総務省が5月20日にまとめた世界の主要6都市(東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、デュッセルドルフ、ソウル)の携帯電話の料金プランを比較した22年3月の内外価格差調査によると、シェア1位の事業者のデータ通信20GBの料金水準は、20年は東京が6都市の中でもっとも高かったが、22年にはロンドンやパリに次いで3番目の安さとなった。金額ベースでは、月額8175円だった20年に対し、22年は2972円に激減している。
シェア上位3社または4社の比較でも、同様の傾向で、携帯電話市場全体で料金が下がったことがわかる。
格安スマホを窮地に追いやった「官製値下げ」の罪
一方、「官製値下げ」は、大手3社を直撃した。先ごろ出そろった各社の22年3月期の通期決算では、いずれも大きな減収要因となった。
1人あたりの月平均利用料金(ARPU)は大きく落ち込み、NTTドコモは売上高が2700億円押し下げられた。KDDIは営業利益が872億円、ソフトバンクも770億円が吹き飛んだという。
NTTドコモの井伊基之社長は「通信料金引き下げの影響は22年も23年も続く」と危機感をあらわにする。