変わる力があれば今の会社でも活躍できる
さて、分析結果をもう少し丁寧に見ていくことにしましょう。〈変化適応力〉とは正確には「変化適応への自己効力感」だと言いました。もう少し分析を掘り下げるために、他の「自己効力感」との比較を行ってみました。
比較したのは「社内活躍」への自己効力感です。つまり、今いる会社や組織の中において、「自分はこれから中心的な役割を担えるだろう」「上位の職位に昇進できるだろう」といった自分の社内地位に関するポジティブな見込みです。
わかりやすく対比すれば、今いる組織に対して「内向き」の効力感と、組織の外も含んだ「外向き」の効力感である変化適応力の、どちらが成果へと強く結びついているかを比較してみたということです。
そうすると、性別や年齢、企業属性などの基本的な事柄をコントロールしても(影響を取り除いても)、〈変化適応力〉のほうが強くパフォーマンスや学習行動などとプラスの関係がありました。
「社内活躍見込み」が唯一強く紐付いていたのは、「組織へのコミットメント」です。つまり、社内でまだまだ活躍できる見込みを持っていると、確かに組織への愛着や会社への想いは強い傾向が見られたのですが、そのことはさほどパフォーマンスにつながっていないということです。
しかも、この〈変化適応力〉とパフォーマンスとの正の関係は、加齢に伴って強くなっていきます。再度「社内活躍見込み」と比べて年齢別に影響度を見ると、歳をとるにつれてどんどん変化適応力のほうが重要になっていることがわかります。
また、この〈変化適応力〉が高いシニア層は、定年再雇用後に仕事内容が変わったとしても満足度が高いまま働き続けられることがわかっています。
変化対応力の背景にある3つの促進心理
さて、中高年からの活躍には、こうした環境変化への備えであり自己効力感である〈変化適応力〉が鍵になりそうだ、ということを見てきました。しかし、〈変化適応力〉と言われても、具体的にどんな力なのかイメージしにくいと思います。