人権侵害といえるブラック校則は誰が作ったのか
ブラック校則は、さまざまなルールで生徒をがんじがらめにします。
髪の毛の色は、黒じゃないといけない。そこで出てきたのが「地毛証明書」。東京の都立高校の4割ぐらいが、生徒に地毛証明書の提出を求めるそうです。生まれつきちょっと茶色いとか、ちょっと色が抜けている生徒がいます。
そこで、もともとの地の毛の色がなんだったかを、保護者の署名・押印つきで証明書を出させるわけです。地毛届とか地毛申請書などともいわれるらしい。校則で黒髪を強要するがゆえに、こうした奇妙な謎ルールが生み出されるわけです。
また、これは2016年に大阪の府立高校で実際にあった話ですが、もともと茶色っぽい髪の毛の色の女子生徒がずっと黒染めをしていた。ところが、皮膚が弱くてボロボロになってしまい、もう続けられなくなった。それで、そのままの茶色っぽい髪色で学校に行ったら、校則に反するということで頭髪指導を受けた。黒染めが不十分だとして授業への出席を実質的に禁止されて、その結果不登校になった。
黒染めの強要は、「法のルール」でいえば、場合によっては、傷害罪とか強要罪になるぐらいの問題になると私は思います。登校中に水を飲むことは禁止、という校則を持つところもあるらしい。こんなのは、それで生徒が体を壊したら傷害罪になる可能性がある。
そういった校則をつくったのは、先生とか教育委員会です。
校則は、学校という「世間」における「世間のルール」そのものといえます。学校という集団がつくっている「世間のルール」は、時に「法のルール」に照らしていえば、明らかに人権侵害である場合があります。こうなると、学校は無法地帯です。
「法のルール」より「世間のルール」のほうが優先される。こういうことがふつうにおこなわれるおかしさに、大人が気づかないところが問題です。
下着の色は白かベージュに限る。黒の下着は禁止。下着検査はやり方次第で人権侵害になるでしょう。
髪もいろいろな規制があります。男子はツーブロックの禁止、女子はおだんご、編み込み禁止。後ろでまとめるときは、高い位置のポニーテイル禁止。前髪は眉毛にかかる程度。セーターは4月以降着用禁止。まあ、あきれるほどいろいろと規制されています。
校則が法律より優先される背景
こういう規制がおこなわれるようになったのは、1980年代ごろ、ツッパリが社会問題となった時期だそうです。学校が荒れて、卒業式に教師が体育館裏に呼び出されて殴られたとか、生徒が盗難バイクで校内の廊下をバリバリ暴走するとか、暴れまわった子どもがいた。それで校則が厳しくなり、服装の乱れを問題視したという流れでした。
学校という「世間」を正常化するためにいろいろなルールが「生徒手帳」に書き込まれた。おそらく年代的にそのころ生徒だった世代が、いま教師や指導側になっているのでしょう。自分たちがやられたから当然、という感覚なのか、あるいは根っから「世間教」に染まっているのか。
ちょうどこの原稿の執筆中に、都立高校などで下着の色指定や髪の黒染めなどのブラック校則5項目が、2022年4月から廃止される、というニュースが流れました。ようやくかという感じですが、これからどんどん変わっていくことを願っています。