日本人に多い無症候性ブルガダ症候群

中でも恐ろしいのが「ブルガダ症候群」です。

特に夜間に突然生じる心停止、心室細動が主な症状です。30~50歳代の日本人を含めたアジア人男性に多く、一過性であれば自然に回復することもありますが、心室細動が止まらない場合は、死に至ることもあります。

普通に生活を送っていた元気な人が朝なかなか起きて来ないので、家族が見に行くとすでに死亡していたケース、いわゆる「ぽっくり病」は「無症候性ブルガダ症候群」ではないかと考えられています。

カーテンの隙間から差す光
写真=iStock.com/Kerrick
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日本人として特に注意すべきブルガダ症候群は、定期健診の心電図検査などで特徴的な波形が見つかることで未然に対処することができます。

拡張型心筋症も突然死することがある病気です。「息切れ」、「呼吸困難」、「両下肢や顔面の浮腫(むくみ)」「体重増加」、「食欲低下」、「全身倦怠けんたい感」、「手足の冷感」、「尿量の減少」などが症状です。

これは「心臓が大きい」という病気で、レントゲンですぐわかりますので、若いうちから発見でき、未然に対処することができます。

動悸、めまいを放置してはいけない

心臓突然死は、心房細動によって引き起こされることが大半です。心房細動は重篤な不整脈で、頻脈の一種です。心房が1分間に350~600回、小刻みに痙攣けいれんし、血液をうまく全身に送り出せなくなり、「動悸どうき」、「めまい」、そして「心不全」を引き起こします。

高齢になるほど発症者が増え、日本における患者数は約130万人、潜在的な患者数は200万人と言われています。誰でもかかり得る、放置していると突然死に至ることもある怖い病気です。心房細動が発症すると、心房の中で「血液の固まり(血栓)」ができ、それが血流に乗って全身に運ばれ、血管を詰まらせてしまうことで脳梗塞の原因になります。

心房細動を予防する第1の選択肢は、保険適応のホルター心電図という24時間記録型の心電図を頻繁につけ、心房細動が起こっているドキュメントをとることです。それにより適切な治療につながります。

最近では心房細動が万が一治らなくても、心原性脳梗塞を予防する手術(2022年4月に新たに保険適用となった左心耳切除術のウルフーオオツカ法)も開発されています。最先端の心臓外科手術の技術革新は、安全で確実な治療の選択肢を与えてくれています。

もう1つの技術革新は、「アップルウオッチ」などのウエアラブル端末です。ウエアラブル端末の進化の波が、心臓血管外科治療の最前線にも押し寄せてきたのです。