とても面倒で大変だ。けれど…
本書の執筆にあたって、ネットで共産党員の知人から愚痴を集めたのですが、党支部の教育活動については、党員側から「とても面倒で大変だ」という愚痴のようなものはしばしば聞かれました(上で教育活動の事例を挙げた国家電網の従業員の愚痴ではありません)。
実際、中国滞在時にも同僚や上司から同じような愚痴は聞かされました。他方で、中国滞在時にも、インターネットを通じたインタビューにおいても、「不必要である」「なくしたほうがよい」という意見を聞いたことはありませんでした。外国人に対する体裁の保持という面もあるのかもしれませんが、「大変ではあるけれど、概ねいいことだと思う」というところが、一般党員の体感ではないかと思われます。
筆者は、経営学を研究していることもあり、日本の知人友人から社員教育に関わる愚痴を聞くことも多々あります。日本のワンマン経営者のいる企業の従業員から、「社員教育があまりにもくだらないのでやめたほうがいい」という意見をしばしば聞きました。社員の愚痴が多い社内教育は、精神論に偏っていたり、業務とはあまり関係のない創業者の独善的な理想やスピリチュアル的な偏った思想を宣揚させられたりするような内容でしたので、同情せざるを得ませんでした。
他方で、大企業の従業員からは、「社員教育や幹部登用の試験は大変だし、時には上司が的外れな指導をしてくることもあるが、訓練や試験そのものは不要ではないと思う」「勉強内容それ自体はためになったと思う」という意見を多数聞きました。訓練を受ける側からの社員教育に対する評価は、ある程度は教育効果を反映しているものです。