企業内の党組織が「人の和」と「ビジョンの共有」を高める
「和」というと、「日本的」な概念と思われがちですが、そうとも限りません。余談ではありますが、「人の和」《人和》というのは兵法書の『孫子』にも出てくる言葉で、中国の組織においても馴染みの薄い概念ではありません。
『孫子』では、天の時や地の利に恵まれようとも、それは人の和にはかなわないと記されています。天候や地形が自軍に有利であろうとも、仲が悪く味方同士がいがみあっている軍隊は戦に負けるということです。
「ビジョンの共有」も、いかにも日本の中小企業経営者が好みそうな言葉ではありますが、外資系企業であっても重視される概念です。
コンサルタントのジェームズ・C・コリンズと経営学者のジェリー・I・ポラスによって著された『ビジョナリー・カンパニー』は組織論の名著と言われています。強くあり続ける企業にはカリスマ的経営者や天才的なアイデアなどは必要なく、企業理念やビジョンをメンバーが共有し、かつ、信じ切っていることが重要だと同書では述べられています。
なぜこんな「資本主義的な話」を共産党組織について述べている本書でしているかというと、組織における「人の和」と「ビジョンの共有」を強めることこそが、職場における党組織のカギとなる役割だからです。この点は、特に、社内での党員教育への関与やレクリエーション活動への関与の面で特に強く出てきます。
共産党員が国有企業に入りやすいワケ
また、大学時代に共産党に入党を希望する学生の少なからずが、国有企業等への就職を選択肢として考えている学生です。
日本では「党員が特権階級として優遇されている」と捉えられることもあるようですが、国有企業側から見れば、既に党員になっている若者を採用したほうが、経営理念や管理の方針に同意してもらいやすく使いやすいという面もあります。
党組織が企業の経営や組織の指導に少なくない影響を及ぼしているため、また、企業幹部と企業内の党組織幹部を同一人物にする取り組みが行われているためです。
企業内党組織における教育の内容
「党課」とは、党組織内で党員への教育を行うことです。中国語の「課」には、授業の意味もあります。党の授業なので「党課」と呼びます。
形式は、大学等の大教室での授業とあまり変わりません。教師役の幹部がパワーポイントの投影や板書をし、それを多数の党員が聴講するというものです。「党課」の教師は、党組織内の幹部が兼任したり、やる気のある特に優れた党員が担当したりしますが、場合によっては、上級党組織の幹部や外部の教師や学者を招聘することもあります。
「党課」それ自体は、企業以外の共産党組織にもありますが、企業内の共産党組織の党課には、社員教育のような側面もある点に特色があります。企業内の「党課」はそれほど高い頻度で催されるものではないようで、国有企業の党組織の場合、年に一回程度、主に夏季に行われます。