SNS以上、しがらみ未満の「つながり」を作りたい
こども食堂は、子どもを中心としつつもその地域交流を取り戻そうとしている。しかしそれを、こども食堂だけがやればいいと思っている運営者はいない。
地域の交流活動は、町内会もやればいいし、お寺もやればいいし、学校もやればいい。だから、大事なのは、「多世代による地域交流」という機能だ。名称は重要ではない。今まであった「多世代地域交流(町内会)」「多世代地域交流(寺社)」は言うまでもなく、「多世代地域交流(保育園)」や「多世代地域交流(コンビニ)」があってもいい。重要なことは、スカスカになっていく地域にあらがうつながりづくりを盛り立てることだ。
いろんな人たちがいろんな名称でやればいい。学校が地域交流をしても、学校の名称を変えようと言う人はいないだろう。小学校は小学校だ。その上で、地域の多世代交流活動も担えばいい。「こども食堂」も同じだ。
もちろん、人々はかつてのしがらみだらけの地域に戻したいわけではない。かといってSNSだけでは物足りない。求められているのは「SNS以上しがらみ未満のつながり」のゆるやかなつながりだ。
こども食堂は、現代の人々のニーズに応える「ちょうどよい」ところを形にした取組みだ。それで広がった。
つながりがあれば、人々はよりご機嫌に暮らせる
こうした場が増えたとしても、深刻な虐待や貧困がなくなるわけではない。福祉や社会保障の重要性は変わらない。
しかし同時に、ひとり暮らしのおばあちゃんが、朝起きて、庭の手入れをしながらふと抱く不安(「いま自分がここで倒れたら、いつ誰が見つけてくれるだろう」)は、政府の現金給付でどうにかできるものではない。ましてやセンサー付きの電気ポットでは埋められない。それに応えるのは、大文字の福祉や社会保障というよりは、もっと普段着の、暮らしの中の人々のつながりだ。
つながりがあれば、人々はよりご機嫌に暮らすことができる。その状態をウェルビーイングと言う。身体だけでなく気持ちが健康な状態、気分が晴れやかな状態だ。孤独孤立が政策課題となるくらい、私たちの地域と社会はつながりに飢えている。
つながりが心身を健康にする。そのことを「こども食堂」を始めた人々はわかっている。
私たちは、自治体ホームページ等の公開情報からこども食堂の名称や住所を集めたマップを作成した。約半数のこども食堂が掲載されている。
あなたがいくつであろうと、あなたが裕福でも、自分には関係ない場所だと思わずに、是非近所の「こども食堂」=「地域食堂」のドアを叩いてみてほしい。
そこで誰かを笑顔にしてあげることができたり、ご自身が笑顔になったりすることがあるかもしれない。