――高校に入った時点では、国公立大学に進学しようと思っていた子は少ないと思うんですが……。柴山先生の指導を受けて大きく変化があった子はいますか?

福岡県の高校受験は県立高校志向が強く、私立は滑り止めというケースも多いです。うちの高校の生徒は、高校に入った時点では大学進学は考えていなかった子が多いですね。

国立大学に受かった子の中に、高2のときは舌にピアスをしている子がいました。うちの学校にはコースが複数あるのですが(特進コース、商業実践コース・情報実践コース、ビジネスビューティーコース)、その子は最も入学偏差値が低いコースの子だったので、受験勉強を始めたときはやり抜くことができるかなと思っていたんです。ところが一番ストイックに勉強して、最後は国公立大の中でも難易度の高い学校の合格を勝ち取った。

ノート
写真=学校提供

――急に勉強スイッチが入ったんでしょうか。

その子が受験勉強をはじめた理由はジャニーズの追っかけをしたいというところからだったんですよ。東京や大阪に近い大学に進学したいと。けれども、勉強しているうちにやりたいことが出てきて、最終的には、貧困問題を解消したいという話をしていましたね。あとは女性のリーダー少ないから、リーダーになってみたいって言ってます。

中学の先生に話したら「お前が大学に受かったんか!」と驚かれたという子もいます。高校生はスイッチ一つで、変わるなと思いますね。

受験勉強をしている生徒の中には、自信が持てずに「やっぱり、専門学校に行こうと思います」と言ってくる子もいます。なんで受験を辞めようと思っているのか理由を聞いたり、行きたいのは大学と専門学校どっちなの? と聞いたりしていくと、「自信がないから、大学受験したくない」と言うんですね。そういう場合は、「専門学校は大学の推薦の受験が終わった後でもチャレンジできるよ」という話をしたり、同じようにモチベーションが下がったけれど受験をした経験がある大学生の先輩とつないだりします。ほっといたらもう勝手に受験を諦めてしまう子もいるので、本当はどうしたいのかを聞くようにしています。

――東大を目指す漫画『ドラゴン桜』の桜木先生のようですね。意識されていますか?

あんまり考えたことないですけど、共感する部分は多いです。あの作品のように実際の指導の場面でも、生徒が落ち込んだりする時期や辞めたいと言うことはよくあるので、その場面での声かけとか参考になります。

また、受験したとしても受かるかどうかわからないねというスタンスだと、生徒は受験勉強を頑張りにくい。受験は「絶対合格する」とは言い切れない部分はありますが、「君なら合格できるよ」と言い切って背中を押すことが教師の役割かなと思います。

――その他、苦労した点や工夫した点はありますか?

『プレジデントFamily2022年春号』
『プレジデントFamily2022年春号』

保護者の中には、大学に進学した経験がない方もいて、お子さんが大学に進学する必要があるのかと思う人もいるんですね。誰でも自分が知らない世界は不安なので、大学に行ってない保護者の不安もわかります。だから、保護者説明会では今の時代の現状を伝えることは意識しています。

「(最近の)大学進学率のパーセンテージ見たことありますか?」といった話や、「短大進学っていう話をする方もいますけれど、今の時代、短大に進学するのは、全国でも5%なんですよ」といった話をします。

人は、20代頃に過ごした時代の価値観を意識して、その後の人生を過ごしがちだという話を踏まえ、保護者の皆さんには「短大や大卒じゃなくても不自由なく過ごせていた時代とは変わっていますよ」と。今の時代を意識してお子さんの進学について、学校とお子さんと保護者とでチームになって考えましょうと伝えます。「今の時代の進学情報を伝えた上で、お子さんに決めさせませんか? 勝手に決めちゃうとあとから恨まれますよ」とお話ししますね(以下、後編「『舌にピアス』『ジャニーズ好き』の女子を難関の国公立大に6カ月で合格させた31歳・国語科教員のすごい技」へ続く)。

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